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このブログの管理人(上野俊彦)の見解は管理人個人のものであり、管理人の所属する上智大学を代表するものではありません。
広告は管理人および管理人の所属する上智大学とは無関係です。掲載されている写真はとくに断りがない限り管理人が撮影したものです。

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ロシア大統領選挙の国際選挙監視員として
3月1日〜7日まで、日本政府の派遣するロシア大統領選挙の国際選挙監視員としてモスクワに滞在。

モスクワ到着の翌日の3月2日は、大統領候補者のジュガーノフ・ロシア連邦共産党議長、ミローノフ「公正ロシア」会派リーダー、ジリノフスキー・ロシア自由民主党議長、プロホロフ「オネクシム」グループ会長の各陣営を回りインタビュー。ただし、プーチン陣営にはアポ取れず。

ジュガーノフ陣営は昨年の12月にも会ったフリッポフ国際部長、ミローノフ陣営はアゲーエフ「公正ロシア」下院議員、ジリノフスキー陣営はコーガン・ロシア自由民主党下院議員、プロホロフ陣営はゼレンツォワ選対幹部にそれぞれインタビュー。

正直、事前のインタビューで興味深い話を聞けたのはプロホロフ陣営だけかな、という感じ。あとの陣営は、質問をしても、あらかじめ想像のつく答えしか返ってこない感じ。

プロホロフ陣営の話で興味深かったのは、書類の不備で立候補できなかったヤブリンスキー陣営の活動家がプロホロフ陣営に加わっているということ。対応してくれたゼレンツォワさんも「ヤーブラコ」の活動家とのこと。なるほどね、っという感じ。



投票日前日は、投票所の視察。昨年12月の下院選挙で「統一ロシア」の得票率90%以上という、信じられない結果を残した投票所のうち、2箇所を訪ね、投票所選挙委員会議長に、そうした結果となった理由を聞いてみました。

1つ目の投票所の議長は、「理由はない。そういう結果なんだからそういう結果なんだ」と、居直りとも言える対応。2つ目の投票所の議長は、投票所となっている学校が地域でも有名な由緒ある学校で(確かにそういう感じの学校ではあった)、その父母たちが政権を支持している、というわかったようなわからないような理由をあげました。うーん、やっぱり不正があったんだろうなぁ。しかし、どんな方法でやったんでしょうか。選挙監視員はそれを見逃したんでしょうか。

投票日当日、投票の始まる40分ほど前に、私はモスクワ市の外側にあるモスクワ州のプーシキノ市の第2298投票所を、もちろん抜き打ちで、訪れました。


第2298投票所は、プーシキノ市のいわば文化センターとも言うべき、なかなか立派な建物に設置されています。この投票所で、私はまる一日、投票を視察し、この投票所で投票締め切り後ただちにおこなわれる開票まで見届けることにしました。

投票が始まる前にカラの投票箱のチェックをして、封印をします。投票箱は、今回の大統領選挙から透明のものが使用されることになりました。


壁にはウエッブカメラが2台据え付けられており、投票所全体を映し出せるようになっています。これも、今回の大統領選挙で初めての試みです。



さて、投票の始まる前の段階で重要なことがあります。それは、地区選挙委員会からこの投票所に送付された投票用紙の枚数を確認することです。投票開始前の投票用紙の枚数の確認がなぜ重要なのかは、もう少し後で説明しますが、この投票所の選挙委員会議長は、この枚数を公表せずに投票所の入り口を開こうとしました。そこで、私は、「地区選挙委員会からこの投票所に送付された投票用紙は何枚か? つまり、今、何枚の投票用紙がこの投票所にあるのか?」と質問しました。投票所選挙委員会議長(女性)は、「2150枚」と答え、壁に貼ってあるプロトコール(投票結果報告書)にその数字を書き込みました。もし、私が質問しなかったら、この数字はこの段階で公表されなかったのでしょうか? 共産党などの監視員はなぜそのことに無頓着なのでしょうか?


投票が始まりました。この文化センターでは、今日、コンサートが行われるとのことで、その楽団や合唱団、また遠方からコンサートを聴きに来た人などが、次々に不在者投票(正式には登録抹消証明書を用いた投票)をおこなっています。登録抹消証明書というのは、本来自分が投票すべき投票所、すなわち自分の名前を含む選挙人名簿がある投票所に、投票日前日までに行き、当該選挙人名簿から当該選挙人の名前を抹消してもらい、選挙人名簿から名前を抹消したという証明書(これを登録抹消証明書という)を発行してもらい、投票日当日はこの証明書を持って用務先の投票所で投票をおこなうためのものです。

この投票所では、この登録抹消証明書を用いた投票が非常に多く、総投票数1431票のうち125票(8.7%)が登録抹消証明書を用いた投票でした。いわゆるメリーゴーラウンド方式というのは、この登録抹消証明書を複数枚用いておこなう重複投票と思われるので(筆者は、このメリーゴーラウンド方式は、あまりに効率が悪い不正の方法なので、つまり、1人が10箇所の投票所を回ってもたった9票しか増やせないわけで、実際には、おこなわれていないのではないかと思っていますが)、投票用紙の交付に際して、しっかり身分証明書で本人確認をおこない、選挙人がきちんと投票用紙受領署名をしているかどうか、すぐ傍でずっと見ていましたが、不正をにおわせるあやしい選挙人は見あたりませんでした。

非常に真剣に各候補者の経歴などを読んでいる選挙人も多く、投票は粛々とおこなわれました。



投票が締め切られると、選挙人名簿に残された選挙人の書いた投票用紙受領署名の数、すなわち交付された投票用紙の枚数と、未使用の投票用紙の枚数が数えられます。この両者の合計は、2150であるはずです。そして、未使用の投票用紙のカドがハサミで切られます。未使用の投票用紙の数は719枚でした。

投票用紙受領署名の数は、交付された投票用紙の数ですから、投票箱に入っている投票用紙の数と一致するはずです。私は投票箱に選挙人が一人一人投票用紙を投じていたのをじっと見つめてきました。投票箱に誰かがまとめてたくさんの投票用紙を入れたりするような不正はありませんでした。しかし、投票箱を開けて、その枚数を数える前に、まずは、交付された投票用紙の数を確認しなければなりません。もし、交付された投票用紙の数を公表せずに、投票箱をあけてその中の投票用紙を数えてしまうと、投票箱の中の投票用紙の枚数に交付枚数を合わせてしまう可能性があります。

ところが、投票所選挙委員会議長は、投票用紙受領署名の数を私が質問するまで発表しませんでした。私が署名の数を尋ねて、その数は1431と発表されました。交付された投票用紙の数は1431枚ということです。未使用の投票用紙の枚数と合わせると2150枚となります。行方不明となった投票用紙や、逆にどこからか持ち込まれた投票用紙もなかったということになります。

このように不正を未然に防ぐためのチェックをすることが重要です。もし、投票が始まる前にあった投票用紙の枚数が公表されていなければ、開票時のどさくさに不正に投票用紙を持ち込まれたとしてもわからないではないですか。ところが、野党の選挙監視員は、こういったことには無関心で、不正をどうぞやって下さいと言わんばかりです。もちろん、私は、この投票所の選挙委員を疑っているわけではありません。投開票を手続き通りに進めるよう指摘しているだけです。むろん、選挙委員会の議長も、私の質問に答えなかったり、ごまかしたりする様子はありませんでした。私に対する対応は友好的で、むしろ親切でした。

こうして、いよいよ開票が始まりました。プーチンの得票は760枚とのことでした。私は、選挙委員会議長に「数え直しますか?」と尋ねました。「もちろん」と彼女は答えました。そこで、私は、「そのとき、プーチンに投じられたとされる投票用紙が、ちゃんとプーチンの名前の右側の四角にチェックが入っているかどうか確認し直してください。間違いがあるといけませんから」と言いました。たんに枚数を数え直すのではなく、投票用紙の見間違えがないかどうかを確認することが大事なのです。


選挙委員会議長は、私に、「見えますか?」と何度も繰り返しながら、プーチンの票をチェックしていきました。すると、なんと25枚も間違えがあり、そのうち23枚がプロホロフ(プーチンのすぐ上に名前ががあるので、見間違えやすい)、ジュガーノフとジリノフスキーが1枚ずつでした。「たくさん、間違えがありましたね。だから、ちゃんと見直しましょうと、申し上げたのです」と私は選挙委員会議長に言いました。彼女は、「確かに」とうなずいていました。こうしてプーチンの得票は735票となりました。

プーチンの票に紛れ込んでいた25枚の投票用紙は、プーチンの票を増やそうとの不正行為の結果だったとは必ずしも言えません。単なるミスとも思えます。それにしても、選挙委員も、野党の選挙監視員も、知識に乏しく、プロフェッショナリズムに欠けていると言わざるを得ません。こうして、全国で、いい加減な開票が行われ、間違いを、あるいは不正を、未然に防ぐことができるのに、みすみす間違いや不正を許してしまっているのではないでしょうか。

さて、すべての候補者の得票が確定したので、プロトコールを書くことができます。ところが、選挙委員会議長は、まずは地区選挙委員会に電話で連絡をしなければならないと、電話で投票結果を連絡しています。電話の向こう側では何を言っているのでしょう。投票所の選挙委員会議長の彼女は、何回か数字を繰り返して言っています。電話を切ったあと、彼女は、休憩を宣言し、投票所の2階で休憩をするからと、私をお茶に誘います。私は、選挙人名簿や投票用紙をそのままにして、この場を離れることに一抹の不安を憶え、お茶の誘いを丁重に断り、この場所にとどまることにしました。なにやらパソコンをいじっている選挙委員の一人(男性)と私を残して、警備の警官も含めて全員が2階に上がってしまいました。

その間、30分ほど。1回、選挙委員会議長の携帯電話が鳴ったほかは、しーんと静まりかえっていました。

休憩が終わったらしく、全員が戻りました。選挙委員会議長は、また地区選挙委員会とおぼしきところに電話をして結果を繰り返し伝えています。何か問題でもあるのでしょうか? 長い電話が終わって、ようやく彼女はプロトコールを記入しました。

下の写真は、壁に貼ったプロトコールですが、これは、正式のものではなく、正式のものはA4用紙ほどの大きさの書類で、投票所選挙委員全員の署名と同委員会の公印が押されたものです。私も最後にそれをいただき、選挙委員会議長にお礼を言い、投票所をあとにしました。ちょうど、時計は午前0時を回ったところでした。
| Russia's Election 2011-12 | 21:38 | comments(0) | - |
2011年12月9日の衆議院外務委員会でのやりとり

仕事柄、衆議院や参議院におけるロシア関連の議論などを見るために、国会会議録検索システムを使うことがたまにあります。今回、何気に12月9日の外務委員会の会議録を読んでいると、ロシアの選挙監視の話のくだりで、私の名前が出てきてびっくりしました。それはともかく、そのやりとりはなかなか興味深いものですので、一部を引用します。なお、文中の、浅野委員は、浅野貴博・衆議院議員(新党大地)、山口副大臣は、山口壯・外務副大臣(民主党)のことです。

*********************************
○浅野委員 (前略)そこで、山口副大臣にお聞きをしたいんですが、先日、五日から六日にかけて、ロシアの下院選の結果が出ました。与党の統一ロシアですかが三百十五から二百三十八議席に減らすという大敗を喫したわけでございますけれども、この選挙結果について、外務省として、政府として、どんな見解をお持ちでしょうか。
○山口副大臣 ロシアの人たちが選んだその結果について、私が今、それがいいとか悪いとかと言う立場でもないので、その辺は、済みません、答弁を差し控えさせていただければと思います。
○浅野委員 この選挙結果について、例えばアメリカのクリントン国務長官は、ドイツのボンで記者会見した際に、選挙管理のあり方に深刻な疑念を抱いていると。アメリカの外務大臣がロシアの国政選挙の結果について疑問を呈したわけでございます。ほかにも、欧州の、ヨーロッパの議会の監視団は、完全に民主的だったとは言えない、そういうコメントを出されております。我が国のスタンスとして、公然とその選挙結果に疑問を呈した欧米とは一線を画す、そういうことでよろしいでしょうか。確認を求めます。
○山口副大臣 アメリカあるいはOSCE等の欧米諸国あるいは機関が行っている評価については、私も承知しています。我が国から派遣した選挙監視団、二人の方に行ってもらったわけです。その方々、お一方は上野俊彦さん、上智大学の先生、それから池上真一郎さん、総務省の選挙課の方に行ってもらったわけです。その報告の中では、監視を行った範囲では全体として投開票は平穏に行われたこと、他方、電子投票システムの使用方法が周知されていない等の技術的な問題もあったとの報告は受けております。日本政府としては、今後とも事態を注視していくという言い方が一番適切だと思います。
○浅野委員 では、技術的な問題は見受けられたにせよ、堂々と不正があったんじゃないかという欧米がしている見方とは我が国は違うということですか。再度確認を求めます。
○山口副大臣 よくアメリカは、ほかの国の国内的なことにいろいろコメントする傾向があるとは思います。戦後からずっと見ている限り、それは今でもいろいろな意味でしていることはあるわけですけれども、我々日本としては、必ずしもそういう傾向を持たずに今までずっと対応しているし、この件についても、現実にその国の内政について、この監視団の方々も、正直、モスクワ州というところの一部しか見られていないわけですから、余りその一部のことでもって全体を決めつけるというのも非常に難しいところもあると思うので、ここはやはり物の言い方は相当気をつけた方がいいかなと思っています。
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以上のやりとりで興味深いのは、浅野委員が、上記の2つ目の質問の最後で、「我が国のスタンスとして、公然とその選挙結果に疑問を呈した欧米とは一線を画す、そういうことでよろしいでしょうか。確認を求めます」、3つ目の質問の最後でも、「堂々と不正があったんじゃないかという欧米がしている見方とは我が国は違うということですか。再度確認を求めます」と、2度にわたって、欧米のスタンスと日本のスタンスは違うのか、という質問をしていて、それに対して、山口副大臣が、「この件についても、現実にその国の内政について、この監視団の方々も、正直、モスクワ州というところの一部しか見られていないわけですから、余りその一部のことでもって全体を決めつけるというのも非常に難しいところもあると思うので、ここはやはり物の言い方は相当気をつけた方がいいかなと思っています」と、答弁していることです。

山口副大臣の答弁は、さすがに、きちんとしたものです。

| Russia's Election 2011-12 | 18:10 | comments(0) | - |
12月5日付インターネット新聞Газета.ruの「水増し」報道
12月5日付のインターネット新聞Газета.ruの報道によると、ジュガーノフ・ロシア連邦共産党議長は、「統一ロシア」の投票結果に関して12-15%の票が水増しされたприписаноと主張していますが、ジュガーノフ議長が言う「統一ロシア」の12-15%の票の水増が本当だとしたら、事前の世論調査や投票日当日の出口調査の結果よりも、「統一ロシア」の本当の得票数のほうがかなり低くなってしまうのですが、ジュガーノフ議長は世論調査や出口調査の結果も水増しされたものと主張するのでしょうか? また「統一ロシア」の得票の10%が水増しだとすると、その水増しされた票数は、「統一ロシア」得票数の32,379,135票の10%の3,237,914票となります。下記のモスクワ市ダニーロフ区第1701番投票所でおこなわれたと主張されている「水増し」数で計算すると、ロシア全国の8281箇所の投票所で、下記第1701番投票所同等の「水増し」がおこなわれなければなりません。そんなことって、本当にあり得るのでしょうか?

さて、同報道の伝える「水増し」疑惑報道ですが、これはドミートリー・スルニンДмитрий Сурнинという「ヤーブラコ」からの選挙監視員が監視していたモスクワ市ダニーロフ区第1701番投票所で、当初の投票結果報告書(プロトコール)と公式に送付されたプロトコールとでは、「公正ロシア」が得票218票のところを100票減らされ、「ロシアの愛国者」が得票15票のところ10票減らされ、「ヤーブラコ」が得票167票のところ100票減らされ、反対に「統一ロシア」が得票271票のところ約400票を水増しして662票に、ロシア連邦共産党が得票285票のところ10票水増しして295票になっている、というものです。なお、ロシア自由民主党については確認できず133票で、「正義の事業」については不変で16票だということです。

ロシア連邦中央選挙委員会のホームページで確認してみると、確かに、モスクワ市ダニーロフ区第1701番投票所の各党の得票数は、スルニンさんが「水増し」だと主張する数字、つまり「統一ロシア」662票、ロシア連邦共産党295票、ロシア自由民主党133票、「公正ロシア」118票、「ヤーブラコ」67票、「正義の事業」16票、「ロシアの愛国者」5票、となっています。

スルニンさんの主張が正しいとすると、「公正ロシア」、「ロシアの愛国者」、「ヤーブラコ」の3党から合計210票が減らされ、「統一ロシア」とロシア連邦共産党の2党に合計401票が加えられているのですが、とするとこの差の191票はどこから持ってきたのでしょうか? 勝手に水増しされた投票用紙だったら、署名の数と交付された投票用紙の数が一致しないはずです。スルニンさんは選挙監視員なのに、そのことには無頓着なのでしょうか? そもそも最初に公表されたプロトコールとは何でしょうか? その写真はないのでしょうか? それがなければ裁判所に訴えても証拠がないので勝ち目はありません。

選挙監視員は開票と集計をすべて監視でき、それらの作業がすべて終わったあとで記入されたプロトコール(これが初めて書かれるプロトコールのはずです)に、投票所の選挙委員会議長の署名と印鑑を押してもらって、それを持ち帰ることができます。それをスルニンさんは持っていないのでしょうか? その正式のプロトコールとロシア連邦中央選挙委員会のホームページで公表されている数字が違うのならば、それはホームページ掲載までのどこかで誤記があったということで、訂正を求めれば、正式のプロトコールの数字に訂正されるはずです。

このブログを記入している12月18日現在の、ロシア連邦中央選挙委員会のホームページで公表されているモスクワ市ダニーロフ区第1701番投票所のプロトコールの数字は、5日付Газета.ruの報道に出ているスルニンさんの主張する「水増しされた数字」のままですが、例えば同じような「被害」に遭ったはずの「公正ロシア」の選挙監視員からは訂正の要求が出ていないのでしょうか?

さて、そうは言っても、スルニンさんの「水増し」の主張は正しいかも知れません。ありそうなことです。もしあったとして、この投票所では「統一ロシア」は391票水増しされたわけですが、「統一ロシア」が1議席増やすためには、143,606票が必要ですから、これと同様の水増しが367箇所以上の投票所でおこなわれなければならないということになります。10議席増やすためにはその10倍以上の投票所で、これと同等の水増しがおこなわれなければなりません。しかし、それだけの投票所で水増しがおこなわれたという報道はあるのでしょうか?

同報道は、スルニンさんの監視した投票所以外に、コストロマ州ガリチ市第133番投票所、同市第125番投票所でも「水増し」がおこなわれたとの主張があると報道していますが、これらの主張がすべて正しいとしても、これだけでは、「統一ロシア」の議席を1議席さえ増やすことはできません。

選挙の不正は、決してしてはならないことであり、不正がなされたならば、その不正を行った人物は厳しく処罰されるべきです。

しかし、選挙結果を著しく変えてしまうような不正があったと確認できるのであれば、選挙結果は正しくないと主張できますが、選挙結果を著しく変えてしまう不正がなかったのなら、その選挙結果自体は受け入れられなければなりません。
| Russia's Election 2011-12 | 17:06 | comments(0) | - |
増幅される真偽不明のロシア下院選ネタ
相変わらず真偽不明のロシア下院選ネタが増幅されています。

12月18日付『日本経済新聞』朝刊10面に池田元博さんが「投票前から投票用紙が入っている投票箱、バスに乗って次々と投票所めぐりをする奇妙な一団、後から消せるペンばかりが置かれた投票所、脇にぽっかりと隙間の空いた投票箱、投票所のロッカーに隠されていた投票用紙の束・・・・・・」と書いています。
 
前後の文脈から、これは池田さんが調べたことではなく、インターネットなどで流布されている情報であると推測がつきますが、池田さんは、これらのことは真実だと判断して記事にしていると考えられます。

しかし、私は、この情報を見たら、疑問が次々と湧いてきました。

「投票前から投票用紙が入っている投票箱」ということですが、この投票所はどこの地域の何番の投票所でしょうか? この投票所では、投票前にカラの投票箱のチェックはしなかったのでしょうか? それともチェックしたときにすでに投票箱に投票用紙が入っていたのでしょうか? だとしたら投票所選挙委員会議長は選挙監視員にそのことをどのように説明したのでしょうか? それらの投票用紙は、本来は、選挙監視員の見ている前で開封した封筒から投票箱に入れられるべき期日前投票用紙なのではないでしょうか?  

「バスに乗って次々と投票所めぐりをする奇妙な一団」とありますが、このバスはどこで発見されたのでしょうか? このバスの車種とナンバーは何でしょうか? このバスがめぐっていった投票所はどこの地域の何番と何番と何番なんでしょうか? 各投票所でこのバスの一団のIDチェックはしていなかったのでしょうか? 実は、投票所めぐりをする奇妙な一団という人々は、僻地に居住する選挙人で、そのバスは僻地に居住する選挙人を投票所まで運ぶバスなのではないでしょうか?

「後から消せるペンばかりが置かれた投票所」ということですが、この投票所はどこの地域の何番の投票所でしょうか? 投票所では持参した自分のペンで投票用紙に記入する選挙人がたくさんいるのですが、これらの普通のペンで記入された投票用紙と、消せるペンで記入された投票用紙を区別するという非常にやっかいな作業はどの段階でするのでしょうか? それとも区別せずに消せるペンの消しゴム部分で消せるものだけ消して書き直すのでしょうか? そんな作業はどの段階でするのでしょうか? つまり投票箱から出した投票用紙の開票は選挙監視員が見ていない場所でやっているのでしょうか(それは違法です)? 誰も見ていないところで開票ができるのなら、そもそも消せるペンなど用意せずとも、選挙結果はどのようにでも偽造できるのではないでしょうか?

「脇にぽっかりと隙間の空いた投票箱」とありますが、そんな投票箱の置かれていた投票所はどこの地域の何番の投票所でしょうか? 選挙監視員や選挙人はこの件について何も指摘しなかったのでしょうか?

「投票所のロッカーに隠されていた投票用紙の束」とありますが、それが発見された投票所はどこの地域の何番の投票所でしょうか? ところで、カギのかかるロッカーに投票用紙が置かれていることは当然のことなのですが、それらの投票用紙は投票日当日、時間がたつにつれて、つまり投票用紙が交付されていくにつれて、ロッカーから少しづつ出されていきますから、「ロッカーに隠されていた投票用紙の束」とは、隠されていたのではなく、これから交付される予定の投票用紙なのではないでしょうか? それを、つまりそれらの投票用紙を、たんに収納されていたのではなく、「隠されていた」と判断した理由はなんでしょうか? ついでにいえば、投票率が100%でない限り、投票が終了した段階で、投票所には、未使用の投票用紙があるはずです。「ロッカーに隠されていた投票用紙の束」とは、この未使用の投票用紙ではないのでしょうか? それとも未使用の投票用紙とは別に保管されていたものなのでしょうか? 投票日前日までにその投票所に地域選挙委員会から送付された投票用紙の数は、交付された投票用紙の数(持ち帰り票がなければ、投票箱の中に入っている投票用紙の数と一致する)と未使用の投票用紙の数との合計と一致していることが確認されているのでしょうか(選挙法では、確認することになっており、その数が公開されることになっている)? 「ロッカーに隠されていた投票用紙の束」は、公表されているはずの投票日前日までにその投票所に地域選挙委員会から送付された投票用紙の数とは別の、余分な、存在してはならないはずの投票用紙なのでしょうか?

そもそも、このように、真偽不明のロシア下院選ネタが繰り返し報道されるのはなぜなのでしょうか? 大量の不正が行われ、選挙結果が正しくないのなら、事前の世論調査や出口調査から推測される予想議席と選挙結果がほぼ一致しているのはなぜなのでしょうか?

私は、「ロシアの選挙では、不正もおこなわれていないし、選挙違反もない」などと主張しようとしているのではありません。人がおこなうことです。不正も選挙違反もあると思います。しかし、報道を見る限り、そんなことは実際にどのようにすればできるのだろうか、と思うような報道が多く、真偽のほどが分かりません。 
| Russia's Election 2011-12 | 15:55 | comments(0) | - |
「ロシア下院選挙の不正」報道について
 ロシアの下院選については、もう少しデータを集めてから分析しようと考えていますが、とりあえず、不確かな「不正」報道が多いのに少し辟易しています。知りたいのは、たんに「不正があった」という情報ではなく、「不正はこのようにしておこなわれた」という事実です。

12月5日のロイターは以下のような報道をしています( http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE7B505J20111206 )。

**********
[モスクワ 5日 ロイター] プーチン首相率いる与党「統一ロシア」が過半数となる238議席を獲得したロシアの下院選(定数450)で、与党が得票の水増しを試みた不正行為があったとの報告が相次いでいる。(中略)ラザレバさんは1990年から選挙管理委員を務めているが、「今回の選挙では前例のない不正行為があった」と指摘。(中略)ラザレバさんが担当した投票所では不正行為は確認されなかったが、トゥーラの共産党幹部は、明らかに同一人物によって書かれた票が50─60も確認された投票所があったと明らかにした。
**********

この報道の、ラザレバさんの「今回の選挙では前例のない不正行為があった」という発言は自身の体験ではないということになります。なぜなら、「ラザレバさんが担当した投票所では不正行為は確認されなかった」というのですから。

さて、「トゥーラの共産党幹部は、明らかに同一人物によって書かれた票が50─60も確認された投票所があったと明らかにした」とありますが、ラザレバさん(彼女も共産党員だそうです)の名前が出ているのに、幹部の名前が出ていないのはなぜでしょうか。それはともかく、この幹部が、「明らかに同一人物によって書かれた票が50─60も確認された投票所があった」と主張しているのですが、その投票所は、どこの投票所で、同一人物の記入したものとする根拠は何でしょうか? 肝心な投票所の場所が明示されていません。そして、投票用紙には、たった1箇所「レ」あるいは「+」などの印が記入されているだけなのですが、その「レ」あるいは「+」を見て、同一人物の記入したものとわかったのでしょうか?

このニュースも、ロシアの選挙並みに、疑惑が多すぎます。

| Russia's Election 2011-12 | 11:02 | comments(0) | - |
2011年ロシア下院選挙結果に対する評価
1.全般的な状況

今回の下院選では、投票率が40%台の連邦構成主体が多く、全体的に低調となっている。

与党「統一ロシア」の連邦構成主体別得票率は、モスクワ市で46.47%だったものの、ヤロスラヴリ州では連邦構成主体別では最低の29.04%で、そのほかモスクワ州32.7%、サンクトペテルブルク市32.47%、レニングラート州33.77%など、モスクワ市など一部を例外として、得票率30%台の連邦構成主体が少なくない。

しかし、全体では、「統一ロシア」の得票率は最終的には50%程度となる見込みで、その結果、国家院での議席数は238議席程度となると予想される。これは、現有315議席からかなりの議席減であるが、過半数の225議席は超えているので、ただちに議会内での立場が弱くなるということはないであろう。
 
第二党のロシア連邦共産党は20%前後の得票率で92議程度となると予想され、現有議席を増加させるものの、「統一ロシア」との議席数の差は依然大きく、国家院における「統一ロシア」の優位性は揺るがないと言える。
 
こうした結果となったのは、「統一ロシア」というより、メドヴェージェフ大統領・プーチン首相のタンデム政権に対する、とりわけその経済政策に対する厳しい評価が背景にあったためと考えられる。

2008年のリーマンショックに端を発するロシア経済の落ち込みは2010年には上昇に転じたものの、物価上昇、失業率の上昇、経済格差の拡大といった問題を生み出しており、メドヴェージェフ政権の経済「近代化」政策もまだ結果が出ていないためである。

事前の世論調査でも、メドヴェージェフ大統領、プーチン首相、「統一ロシア」の支持率は低下傾向にあり、今回の下院選挙結果は、ある程度予想されていたことで、モスクワでの驚きはなく、現地4日深夜に行われたメドヴェージェフ大統領・プーチン首相の記者会見でも、深刻さはなかった。
 
とはいえ、3月の大統領選に向けて、出馬予定のプーチン首相は、勝利は確実視されるとはいえ、さらなる国民の支持取り付けのために、短期的に国民に歓迎されるような政策、例えば年金引き上げ等の政策を実施して、若干なりとも支持拡大を目指さなければならないだろう。
 
2.内外への影響

下院での「統一ロシア」の優位性が維持される以上、外交関係への影響はすぐに現れることはないように思われる。日露の平和条約締結交渉にも直接的な影響はないであろう。
 
今回の結果について、メドヴェージェフは「これが民主主義だ」と努めて肯定的に受け止めようとしているが、メドヴェージェフの首相就任は微妙である。というのも、9月24日の「統一ロシア」党大会で、メドヴェージェフは、「下院選で勝利したら、これまでの近代化の仕事を継続する」との趣旨の発言をしており、この選挙結果が、敗北であると認識されるのであれば、首相には就任しないという含みがあると考えられるからである。
 
もちろん、「統一ロシア」関係者は過半数を獲得している以上、敗北ではないというスタンスであるが、メドヴェージェフを名簿の筆頭に掲げて選挙戦を戦った結果が大幅な議席減である以上、メドヴェージェフの去就は微妙な問題となってきたと言わざるを得ない。
| Russia's Election 2011-12 | 16:23 | comments(0) | - |
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