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このブログの管理人(上野俊彦)の見解は管理人個人のものであり、管理人の所属する上智大学を代表するものではありません。
広告は管理人および管理人の所属する上智大学とは無関係です。掲載されている写真はとくに断りがない限り管理人が撮影したものです。

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ヴラジヴォストークでの日露首脳会談と北朝鮮問題

ヴラジヴォストークでの日露首脳会談で、北朝鮮問題に対して、安倍総理とプーチン大統領は、9月3日の北朝鮮核実験は、朝鮮半島及び地域の平和と安定に対する深刻な脅威であるとの認識では一致したものの、安倍総理が米政府の提案した石油禁輸を含む新たな制裁決議案を念頭に制裁の強化を主張したのに対して、プーチン大統領は、制裁の強化に反対し、米韓合同軍事演習の停止などを含む「段階的な問題解決」と話し合いによる解決を主張した、とのことだ。

北朝鮮と休戦ラインを挟んで隣接し、休戦ラインからほど近いところに人口1000万を超える首都ソウルがある韓国も、米国との合同軍事演習を実施したものの、強硬策には反対している。

私は、北朝鮮問題については同じ民族が分断状態になって隣接している韓国の意向が最も重視されるべきだと思う。他方で、太平洋を挟んで遠方に位置して、文字通り対岸の火事である米国の主張に安易に同調すべきではないと考える。

北朝鮮が欲しいのは文字通り自国の安全保障なのだから、制裁の強化や、まして軍事力による恫喝は、返って逆効果だと思う。

北朝鮮を追い込むことは、かつての日本の真珠湾奇襲攻撃という暴挙を繰り返させるだけだと思う。

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武井咲さんのこと

JUGEMテーマ:ニュース

女優の武井咲(えみ、と読むことを最近知りました)さんが、妊娠、結婚ということで、少し話題になっているらしいですが、私にとって興味深いのは、彼女がたくさんCM契約をしていて、それが妊娠・結婚ということから違約金を支払って破棄する的な話が出ていることです。契約の内容を知らないので、契約自体にどうのこうの言えませんが、莫大な違約金を払うっていうような話って、ある種のマタハラ(マタニティ・ハラスメント)だなぁ、って思います。

彼女がどんなCMに出ているか知らないですけれど、彼女をCMに起用している企業が、「武井咲さんが妊娠・結婚するということなので契約破棄します。契約期間中の武井さん側の責任による破棄なので違約金をいただきます」っていうようなことを言ったら、世の中の女性を敵に回すことになり、企業イメージも悪くなると思いますが、どうなんでしょう。

このCMには、独身の若い女優さんを使う、というCMの企画意図はあるのでしょうが、その女優さんが妊娠・結婚するというのは、不思議なことでもおかしなことでもないので、その企業としては、妊娠や結婚した女性も顧客として想定しているなら、その女優さんを使い続けても全く問題はないような気がするけど。

製薬会社は彼女との契約を継続するらしいですけど、当然の選択だと思います。

妊娠したから降格とか配置転換とか、やんわりと退職を勧めるとかって、ブラック企業と呼ばれる要件の一つです。

もし、高額の違約金云々の話が、報道による根拠ない推測だとしたら、報道している側が、マタハラしているということになります。

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ロシア報道における「印象操作」
トランプ米国大統領の取りあえずのこれまでの功績は「フェイク(偽)ニュース」という言葉を流行らせたことだと思う。一方の安倍総理も同様にメディア関連用語とも言える「印象操作」という言葉を流行らせたが、これも秀逸だと思う。
 
話は少し変わるが、春学期に私が担当している「ロシア・ユーラシア地域研究入門1」(以下、たんに「入門1」とする)と「ロシア政治・外交B」(以下、たんに「政治外交B」とする)という授業で、6月末締め切りで、以下のようなレポート課題を出した。
 
【レポート課題】
2016年7月1日以降に公表されたロシア国内政治に関する報道を1つ(必要に応じて複数)取り上げ、それに対するコメントを書く。コメントは、報道の真偽、報道の仕方、すなわち報道の客観性・中立性または恣意性、報道(記事作成者)の意図、報道(記事作成者)のステレオタイプ(型にはまった考え方)またはバイアス、見出しと報道内容の不一致などに対するコメントとする。報道されている事件・事実関係そのものに対するコメントではない。そして、たんなる感想ではなく、問題点・疑問の指摘、批判的視点、いわゆる「突っ込み」などがあることが望ましい。
 
これは、「政治・外交B」のレポート課題で、「入門1」のほうは、1行目の「ロシア国内政治に関する報道」という部分が、授業の内容に合わせて、「ロシア・ユーラシア地域(旧ソ連地域)の歴史または現代政治、あるいは日本との関係に関する報道」としたところが異なるだけである。
 
授業の履修登録者数は、「入門1」が121名、「政治・外交B」が91名なので、概ね200本ほどのレポートが提出された。そのレポートの多くが、取り上げた報道について、「読者をミスリードするものである」といった指摘をしている。読者をミスリードするとは、読者を間違った方向に導く、つまり読者を誤解させる、という意味である。学生のレポートに添付されている報道を読むと、確かに、学生の言うとおりである。
 
ちなみに、今の学生は、紙の新聞をほとんど読まないため、学生がレポートに添付している報道はほとんど、ネット上で公開されている報道である。もちろん、報道の送り手には新聞社もあるが、内外の通信社やテレビ局のものも多い。
 
さて、学生の言う「ミスリード」の典型例として複数の学生が取り上げた報道は、6月12日にロシア全土で行われた反腐敗デモについての報道である。締め切りが6月末だったため、直近のこの報道を取り上げた学生が少なからずいたわけである。
 
念のため、この6月12日のデモについての代表的な報道を以下に示そう。
 
**************************
【朝日新聞(2017年6月13日、紙媒体は同日朝刊9頁)】
ロシアで反政府デモ 高官汚職を批判 首都など各地
 ロシア各地で12日、政府高官らの汚職を批判するデモが開かれた。モスクワでは、老朽化した住宅の建て替え計画への反対派も呼応し、少なくとも数千人が参加したとみられる。プーチン大統領の支持率は8割を超えているが、政府高官や行政当局への不信感は根強いことが浮き彫りとなった。
 極東のウラジオストクでは中心部の広場に300人以上が集まり、「プーチンは泥棒」「政権交代が必要だ」など政府の汚職体質を批判して市内を行進した。
 ただ集会は当局が許可せず、主催者が同日朝に拘束されたほか、プラカードを掲げた人など約10人も警察に捕まった。政権支持派との小競り合いで負傷し、流血する人も出た。
 参加した建設業のアレクサンドルさん(39)は「ロシアは豊富な資源があるのに政権幹部らが懐に入れるので、給料が上がらない。プーチン大統領はやめるべきだ」と話した。
 モスクワでは、デモの呼びかけ人でプーチン政権を厳しく批判し、政府高官の蓄財やぜいたくを暴露してきた野党指導者のナバリヌイ氏が自宅を出たところで警察に拘束された。市中心部は警官隊が多数配備され、ものものしい雰囲気につつまれた。周辺には数千人が集まった。ナバリヌイ氏のTシャツを着た若者や、欧州連合の旗を掲げた若者が次々に警官隊に取り押さえられた。独立系メディアによると、600人以上が身柄を拘束された。
 ナバリヌイ氏は3月26日に、ロシア各地で反政権デモを開くことに成功した。今回はその続きという位置づけだ。
 さらに首都モスクワでは12日、ソ連時代に数多く建設された5階建ての集合住宅建て替え計画への反対派もデモを行った。計画は、今年2月、プーチン大統領とソビャーニン・モスクワ市長が打ち出した。しかし、住民からは「財産権の侵害で憲法違反だ」との反発が噴出。プーチン氏は「無理やり押しつけてはいけない」と発言するなど、火消しに追われている。背景には、建て替え計画の背後に行政当局の利権や腐敗があるのではないかという根強い不信感がある。
 来年3月に次期大統領選を控え、プーチン政権は反政権運動の盛り上がりに神経をとがらせている。
 (モスクワ=駒木明義、ウラジオストク=中川仁樹)

 
【読売新聞(2017年6月13日、紙媒体は同日朝刊7頁)】 
反プーチンデモ900人超拘束
【モスクワ=畑武尊】ロシア各地で12日、プーチン政権の腐敗に抗議する大規模なデモが行われた。3月末のデモに続くもので、独立系メディアによると、モスクワではデモを呼びかけた著名なブロガーのアレクセイ・ナワリヌイ氏(41)ら600人以上が拘束された。
 モスクワ市当局によると、市中心部では約5000人の若者らが集結、プーチン体制下で広がる閉塞(へいそく)感や格差拡大への不満を背景に「プーチンなきロシアを」などと声を上げた。周辺には多数の警官が配置され、緊張した雰囲気が続いた。
 地元メディアによると、西部サンクトペテルブルクなどでも集会が開かれ、全土で900人以上が拘束された。
**************************
 
朝日が「反政府デモ」としているのに対して、読売は「反プーチンデモ」としている、といった細かなツッコミはさておき、学生の言う「ミスリード」というのは、以下のようなことだ。
 
【これらの記事を読んだ読者は、「ロシアでは反政府デモが鎮圧されている。ロシアは言論や集会の自由もない非民主的な国だ」と思うだろうが、これらのデモの参加者が拘束されたのは、これらのデモが反政府デモだからという理由ではなく、許可されていない場所で行われた無届けデモだからだ。デモ主催者が、モスクワ市当局が許可していた場所ではなく、本来、集会やデモを行うことができない市中心部の繁華街で無許可デモを強行した、ということを伝えないことで、あたかもロシア政府が非民主的であると誤解させる報道であり、この報道は読者をミスリードするものである。】
 
確かに、デモが行われ、拘束された参加者がいたのは事実だから、上記の報道は、トランプ氏の言う「フェイク・ニュース」ではない。しかし、ロシア政府は非民主的であるという「印象操作」が行われたのは、間違いのないところであろう。もちろん、学生たちは、だからといって、ロシアは民主的である、ということを主張しようとしているわけではない。学生たちは、現代ロシア政治にも、多くの問題があるということは、十分にわかっているはずだ。
 
ところで、モスクワ市当局はデモを許可しているのは、以下に示すように、別の報道で、すでに明らかになっているのだから、上記の報道は、デモが無届けデモ、または違法デモであることを伝えないことで、「印象操作」していると非難されても仕方ないところだろう。
 
学生は、ちゃんと、モスクワ市当局がデモを許可していることを伝える報道も見ている。たとえば、以下の報道がそれである。
 
**************************
【モスクワ 12日 ロイター】
モスクワ当局は、市中心部から離れた場所でのデモ開催を承認したが、ナワリヌイ氏は11日夜、デモで使用する音響・映像機器の提供を当局の圧力により企業が拒否していると発表。このことからモスクワでのデモ開催場所を市中心部に変更しており、当局がデモを違法とし、機動隊がデモ鎮圧を命じられる可能性がある。
( http://jp.reuters.com/article/russia-opposition-protests-idJPKBN1930BJ )

【BBC NEWS JAPAN 6月12日】
ナワリヌイ氏は当初、別の場所でデモ開催の許可を得ていたが、当局が参加者たちを「侮辱しようとした」として、モスクワ中心部で開くことを決めた。
( http://www.bbc.com/japanese/40245203 )
**************************
 
今回のレポート課題のために、あらためて日本のロシア報道を読んで、そのひどさに驚いた学生が多かったようだ。
 
私は、以前から、折に触れて、日本のロシア報道について批判してきた。たとえば、2005年のNGO・NPO法改正や、2011年12月の下院選の「選挙不正」に関する報道については、論文(「2005年12月のいわゆる『「NGO関連法」修正法』の制定過程について」『ロシアの政策決定−諸勢力と過程』日本国際問題研究所、2010年3月; 「下院選から大統領教書、そして改革へ?−2011年12月下院選に対する『不正のない選挙のために』運動の意味とその影響−」『ロシアにおけるエネルギー・環境・近代化』日本国際問題研究所、2012年3月)の中で批判しているが、とくに2011年下院選後の報道には、明らかに「フェイク・ニュース」、つまりなかったものをあったとするニュースも見られた。
 
まあ、多くの人が、ロシアに関連するニュースなど気にもとめないでほしいと願うばかりである(笑)。

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「テロ等準備罪」新設法案のどこが問題なのか?

私が最も問題だと思うのは法案第6条の2の規定だ。この規定をわかりやすく説明すると以下の通りとなる。

【同じ団体に所属する2人以上の人物が、4年以上の懲役または禁錮の刑が定められている犯罪行為を計画し、その計画に基づいて資金または物品の手配、関係場所の下見その他の準備行為を行ったとき、その人物は、2年以上の懲役または禁錮の刑に処せられる。】

政府が、「テロ等準備罪」と言っているから、テロの準備をしたら罰せられるのだと思うかも知れないが、法案は、「4年以上の懲役または禁錮の刑が定められている犯罪行為」を準備した場合に適用される、と規定している。

で、この法案では、この「4年以上の懲役または禁錮の刑が定められている犯罪行為」にはどのようなものがあるかを「別表第三」に列挙している。それを見ると、私文書偽造、強制わいせつ、収賄、重要文化財損壊、補助金不正受給、特許権・意匠権・商標権侵害、脱税など、非常に多くの、ひょっとしたら普通の人でも犯してしまう可能性のある犯罪が列挙されている。

つまり、テロだけでなく、「4年以上の懲役または禁錮の刑が定められている」普通の(というのも変だが)「犯罪行為」を計画してそのために物品や資金を集めたら犯罪となる、ということだ。

また「団体」というのが、「テロリスト集団」だから、一般の団体は関係ないと考えるかもしれないが、この法案で言う「団体」は、その「4年以上の懲役または禁錮の刑が定められている犯罪行為を実行することを目的とする団体」としているから、これまた普通の(というのも変だが)団体が、この法案の対象となる可能性は十分ある。

警察や司法機関は善意で仕事をしているという性善説に立てば話は別だが、この条文を見る限り、当局がその気になれば、いくらでもテロ等準備罪で人を処罰することができるように思える。

刑法は、基本的に行われたことに対して罰するということになっていて、未遂を罰する場合でも、かなり限定されている。殺人という重大犯罪に関してさえ、「○○を殺してやる」と叫んだだけでは、殺人未遂にはならない(相手に聞こえて、相手が恐怖したら脅迫罪にはなる)。ところが、2人がひそひそ話で「○○を殺してやろうか」と冗談で話したあと、コンビニに荷造りひもを買いに行ったら、殺人「準備罪」になる可能性がある。

法務省ホームページに出ている法案のPDFファイルのアドレスは以下の通り。http://www.moj.go.jp/content/001221008.pdf
また、第6条の2の原文は以下の通り。

第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
 一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
 二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮

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2016年12月15〜16日の日露首脳会談について
今回のプーチン大統領の日本への公式訪問は11年ぶりのことだという。もっとも、日露の首脳会談そのものは、もっと頻繁に行われており、2012年5月にメドヴェージェフ氏に替わってプーチン氏が3度目の大統領に就任し、安倍氏が2012年12月に2度目の総理大臣に就任して以降、2013年に4回、2014年に3回、2015年に2回、そして今年、2016年は今回で4回目である。年ごとの首脳会談の回数を見てみると、ウクライナ政変の影響もあって、2014年、2015年と減少傾向にあったが、2016年は2013年と同じレベルに戻ったことになる。

上記の2013年から現在までの時期で、日露関係がもっとも良好だった時期は、安倍総理のモスクワ訪問により首脳会談がおこなわれ、「日露パートナーシップの発展に関する日本国総理大臣とロシア連邦大統領の共同声明」が発表された2013年4月29日から、G7首脳でただ一人、安倍総理がソチ・オリンピック開会式に出席し、首脳会談がおこなわれた2014年2月8日までの時期だったと言える。

上記の2013年4月29日の「共同声明」では、日露間の「戦略的パートナーシップ構築」を目指すことが確認されるとともに、平和条約締結交渉については、「第二次世界大戦後67年を経て日露間で平和条約が締結されていない状態は異常であること」、「平和条約問題の双方に受入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化させる」こと、「互いの国民感情への配慮を背景として平和条約交渉を進めること」が確認されている。とくにこの「共同声明」において、日露が「戦略的パートナーシップ構築」を目指しているとの認識が示され、日露間で初めて日露外務・防衛閣僚協議、いわゆる「2+2」の立ち上げが合意されたことは、我々に、日露関係が新しい段階に入りつつあることを感じさせるものであった。そして、実際、2013年11月2日に、日露外務・防衛閣僚協議が実施され、翌年2月のソチ・オリンピック開会式にG7首脳の中でただ一人、安倍総理が出席したことで、日露関係は新段階に入ったことが立証された。

しかし、その直後に起きたウクライナ政変と、ロシアによるクリミアの併合、それに対する日本および米国・EU諸国による対露経済制裁の実施は、新しい段階に入ったかに見えた日露関係を再び後戻りさせてしまった。

かくして、今回の日露首脳会談の最も重要な目的は、日露関係のレベルを、日露関係がもっとも良好だった2013年4月29日から2014年2月8日までの時期のレベルに戻すことであった。日露首脳会談の前には、日本ではつねに、いわゆる「北方領土」問題の解決、すなわち平和条約締結に向けて、どの程度、日露関係が前進するのか、ということが話題となる。そして、もっと性急な人々は、島がいくつ返ってくるのか、ということを言い始める。しかし、今回の首脳会談は、ウクライナ政変後、後退してしまった日露関係を元に戻すことであって、平和条約締結交渉に関する具体的な進展は期待できなかった。

したがって、今回の日露首脳会談に対して平和条約交渉の進展を期待していた日本の人々は、その結果に失望したであろう。しかし、今回の首脳会談の目的は、日露関係の修復または回復だと考えていた人々は、その目的はある程度達成されたと評価していると考えられる。とくに「2+2」が再開されることは、日露関係の修復を裏付けることとなるという点で、注目に値する。

ところで、今回の日露首脳会談後の共同記者会見での安倍総理とプーチン大統領の発言の中で注目すべき部分は、両者が、ともに、)綿四島(南クリル)における共同経済活動が「平和条約締結交渉の継続のための互恵的な雰囲気をつくり出すことを可能にする」(プーチン)というロジックを用い、◆崙露、両国民の相互の信頼なくして、日露双方が受け入れ可能な解決策を見つけ出し、平和条約締結というゴールにたどり着くことはできません」(安倍総理)、つまり相互信頼が重要、との認識を示したことだ。

とくに、,遼綿四島(南クリル)の共同経済活動の実施に向けて、ようやく日本側がわずかにロシア側に歩み寄ったことは注目に値する。1990年代にプリマコフ氏(元外相、元首相)が提案し、1998年11月13日に発表された「日本国とロシア連邦の間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言」において、北方四島(南クリル)における「共同経済活動に関する委員会を設置するよう指示する」と書き込まれて以降、18年ものあいだ、まったく具体的な進展のなかった共同経済活動が、今回の首脳会談後に、少しでも動き始めるとしたら、これはロシア側にとっては外交的勝利と言えるであろう。もちろん、日露間の係争地である北方四島(南クリル)における共同経済活動は、モスクワやサンクト・ペテルブルク、あるいはウラジオストクなどに日露の合弁企業が設立され、活動を始めるのとはまったく意味が異なり、主権や法律に関係する難しい問題があって、そう簡単に進むことではない。だからこそ、もしこの共同経済活動の実施に向けて日露双方が歩み寄ることができれば、平和条約締結に向けて前進することにつながると、両国首脳は考えているのであろう。

今回の首脳会談では、日露のビジネスマンが集い、日露間で新しいビジネスが数多く動き始めることが約束された。このことについては、おおむね順調に進むと思われる。やはり、注目すべきは、北方四島(南クリル)における共同経済活動が動き出すかどうかである。
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5月8日付『北海道新聞』朝刊7面にインタビューが掲載されました
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2015年12月16日の民法750条(夫婦同氏制)の合憲性についての最高裁判決について

今日の日本の最高裁の「夫婦同氏制」に関する判決も、また、最高裁の消極性ないし保守性を示したということができます。

「夫婦別姓の禁止」は合憲と最高裁判断、といったニュースが流れています。私は、今日、最高裁がどのような判決を提示するのか、強い関心を持って見ていました。

裁判は正直わかりにくいことが多く、報道の判決要旨などを見るだけで必ずしも、正しく理解できるとは限りません。

しかし、判決文は、それなりの長さがあり、かなりわかりにくいものです。とはいえ、自分なりにちゃんと理解したいと思うなら、直接、判決文を読むことをお勧めします。判決文は、最高裁のホームページで即日公表されます。以下がそのアドレスです。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/546/085546_hanrei.pdf

さて、今回の裁判は、上告人が、「夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定(以下「本件規定」という。)は憲法13条、14条1項、24条1項及び2項等に違反すると主張し,本件規定を改廃する立法措置をとらないという立法不作為の違法を理由に,被上告人に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求める」ものでした。

「上告人」って何?と思う人がいますよね。ここで、訴えている人を「上告人」と読んでいるのは、この裁判が第一審ではなく、訴えた人が以前の判決に不服であるとして、上級審である最高裁に訴えたものであるからです。つまり、下級審の判決に不服であるとして最高裁に訴えることを「上告」と言うことから、「上告人」と呼んでいるのです。

ところで、裁判は、損害賠償請求として起こされています。「なんだ、要するに、金が欲しいんかい」と思った方がいると思いますが、そうではありません。民事訴訟の場合、損害賠償を求めるものとして行われるのが一般的です。しかし、今回のケースでは、損害賠償請求はあくまでも形式的なものにすぎず、上告人が実際に求めていることは、民法750条の規定は違憲であるという判決を引き出し、その結果、民法750条が改正されることです。

しかし、今日の判決は、民法750条の規定は、〃法13条、14条1項、24条1項及び2項、に違反していない、というもので、上告人の訴えは退けられました。

判決は、憲法の上記の3つの条項について解釈を与え、民法750条がその各条項に違反したものではないことが、憲法の上記の3つの条項ごとに説明されています。

ここで興味深いのは、 嵋楫鏥定は,憲法13条に違反するものではない」、◆嵋楫鏥定は,憲法14条1項に違反するものではない」と結論づけながら、そのあとで、「もっとも。。。」という書き出しで、上告人の主張に一定の理解を示していることです。
すなわち、最高裁の判決は、,砲弔い討蓮◆屬發辰箸癲⊂綉のように、氏が、名とあいまって、個人を他人から識別し特定する機能を有するほか、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格を一体として示すものでもあることから、氏を改める者にとって、そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり、従前の氏を使用する中で形成されてきた他人から識別し特定される機能が阻害される不利益や、個人の信用、評価、名誉感情等にも影響が及ぶという不利益が生じたりすることがあることは否定できず、特に、近年、晩婚化が進み,婚姻前の氏を使用する中で社会的な地位や業績が築かれる期間が長くなっていることから、婚姻に伴い氏を改めることにより不利益を被る者が増加してきていることは容易にうかがえるところである」と述べています。

△砲弔い討癲◆屬發辰箸癲∋瓩料択に関し、これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることに鑑みると、この現状が、夫婦となろうとする者双方の真に自由な選択の結果によるものかについて留意が求められるところであり、仮に、社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば、その影響を排除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは、憲法14条1項の趣旨に沿うものであるといえる」と述べています。

またについては、「もっとも」ではなく、「なお」で始まる文章が添えられており、「いわゆる選択的夫婦別氏制・・・に合理性がないと断ずるものではない。上記のとおり、夫婦同氏制の採用については,嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め、この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである」と述べているのです。

結局、今回の最高裁の判決をよく読むと、夫婦同氏制を定めた民法750条の規定は、〃法13条、14条1項、24条1項及び2項、に違反していないとしつつも、夫婦同氏制により不都合が生じることがあることはその通りであり、国会で選択的夫婦別氏制を含め、どうすべきか決めなさい、と主張していることがわかります。

こうして、冒頭の私のコメントに戻ります。日本の最高裁が、自身で判断せず、しばしば国会に判断を委ねてきたことを、私は日本の最高裁が消極的、保守的であると言ってきました。三権分立の主旨からして、裁判所が、国会に判断を委ねることなく、「司法権の独立」を発揮して、主体的に判断して欲しいと思ってきました。今回は、判断回避や門前払いでなく、一応、ちゃんとした判決を出しているのですが、やはり「もっとも」とか「なお」とか言って、自身の主張に自信なさげで、国会に最終的な判断を委ねているように見えます。もちろん、国民の選挙によって選ばれた国会こそ、最高機関であるという考え方が前提にあれば、そうした判断も、一概には批判できませんが、国民の「選挙」自体の信頼性が問われているこんにち、国会の判断に委ねてしまうことや、社会の常識のようなところに判断の根拠をおくことには疑問を感じます。むしろ、立憲主義と人権を守るために、司法は、積極的かつ進歩的(国会よりも、という意味で)であってほしい、と私は思います。

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安保法案、参院で可決のニュースによせて
安保法案それ自体の中身、与野党の国会運営のやり方というよりも、もっと重要な問題がある。最も重要な問題は、安保法案の内容が憲法違反であるということだ。憲法に違反していても、国会の多数決があれば立法可能なら、憲法は不要であり、憲法の存在意義はない。つまり、立憲主義が無意味化するということだ。立憲主義は、近代国家の基本である。日本にはそれが確立されていないということを世界に対して示したということだ。日本国民は、政治や外交の分野では、ますます世界から信用されなくなるだろう。そのことを私は最も憂える。

安保法案の中身に賛成の人も反対の人も、憲法にどう書かれていようと、内閣が憲法の解釈を変更することができること、国会の多数決で憲法に反することも決めることができることが、よいと考えているのか?

くり返して言う。安保法案は憲法違反である。憲法に違反している法案を多数決で法制化できるのは間違っている。そのことの危険性をもっと多くの国民が認識して欲しい。

私は憲法を改正すべきでないとか、安保法案の内容が間違っているとかと、一言も言ったことはない。それ以前に、法律や行政命令は、憲法に違反してはいけないという当たり前のことを言っているだけだ。安保法案を可決したければ、まず必要なのは、憲法改正のはずだ。

安保法案が可決されたあとは、最高裁が違憲判決を出すということが必要だが、この最高裁が、これまで憲法判断を避けてきている。

私は、日本にいて、自分はこれまで何をやってきたんだと、無力感でいっぱいだ。くり返すが、この無力感は安保法案が可決されたことに対してではない。立憲主義がいまだに確立されていないことにだ。
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デザイン優先で、コストは当初から「課題」だった、新国立競技場設計案
7月6日に facebook上で新国立競技場のデザインを「醜悪とさえ思える」と書きましたが、学生さんからよいデザインだという意見も聞きました。いずれにせよ、デザインの問題は好みの問題があり、議論の本質的な問題ではありません。ただ、デザインについて言えば、上空からの鳥瞰パースが完成予想図として使用されていることが多いのですが、完成後に人々が実際に見るのは、地上からアクセスするときの視線です。

さて、議論の本題に入りますが、今日の安藤氏の記者会見の際に配布された資料( http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150716-00000003-wordleaf-soci )によると、「『1300億円の予算』、『神宮外苑の敷地』、オリンピック開催に求められる『80,000人の収容規模』、スポーツに加えコンサートなどの文化イベントを可能とする『可動屋根』といった、これまでのオリンピックスタジアムにはない複雑な要求が前提条件としてありました」と書かれています。 ところが、ザハ・ハディド氏の案が選ばれた理由としては次のように書かれています。

「審査で選ばれたザハ・ハディド氏の提案は、スポーツの躍動感を思わせる、流線形の斬新なデザインでした。極めてインパクトのある形態ですが、背後には構造と内部の空間表現の見事な一致があり、都市空間とのつながりにおいても、シンプルで力強いアイディアが示されていました。とりわけ大胆な建築構造がそのまま表れたアリーナ空間の高揚感、臨場感、一体感は際立ったものがありました」。

つまり、重視されたことがデザインであるということがわかります。そして、さらに次のように書かれています。

「一方で、ザハ・ハディド氏の案にはいくつかの課題がありました。技術的な難しさについては、日本の技術力を結集することにより実現できるものと考えられました。コストについては、ザハ・ハディド氏と日本の設計チームによる次の設計段階で、調査が可能なものと考えられました」と述べられています。

以上のことから、ザハ・ハディド氏の案は、デザインで選ばれ、「技術的な難しさ」と「コスト」は当初からの課題だった、ということなのです。

個人の住宅と比較するのが適切であるかどうかわかりませんが、私が2001年に自宅を建築したとき、まず初めに予算があり、その予算の範囲内で、デザインや機能などの面で、最善のプランを考えるために、建築家の方と一緒に何度も協議し、調査・研究し、約半年の時間をかけて設計プランを作成しました。予算が無尽蔵でない以上、まずコストがあり、その範囲でしかつくれないのです。

ところが、新国立競技場はどうでしょう。コストや技術(技術によりコストも決まります)は後回しで、デザインが選定の決め手になっています。まったくあり得ないことです。安藤忠雄氏を初めとして、この新国立競技場の建設に係わっている方たちが、まず予算ありき、つまり国民の税金によってつくられるのだ、ということについてどれだけ考えたのでしょうか。
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安保法制は違憲なのに自衛隊は合憲なの?
私は、自衛隊は戦力にあたるので憲法違反だと考えています。したがって、私は、憲法9条を改正してから、防衛庁と自衛隊を設置すべきであったと考えています。このときの、憲法改正なしに、なし崩し的に再軍備したという「ボタンの掛け違え」のしわ寄せが、さまざまな問題を生み出しているのだと思います。

また現在の安保法制の議論では、憲法9条が認めている自衛権は個別的自衛権までか集団的自衛権までか、ということになっていて、多くの専門家は個別的自衛権しか認めていないという立場に立っているように見えますが、この問題も、詳細な検討が必要です。

憲法9条がありながら自衛隊の存在を認める立場は、おおむね、「自衛権、すなわち自分で自分を守る権利、というものを認めないという法理はあり得ない。だから、憲法9条も個別的自衛権までは否定していない。従って、憲法9条は、最小限の専守防衛に徹する自衛隊の存在を否定するものではない」とする考え方に基づいていると考えられます。私は、この考えは、一見、合理性があるように見えますが、実は、「自分で自分を守る権利」という個人の権利と、「国家の自衛権」とを同列にして論じているところに問題があると考えています。

人が何者かによって攻撃を受けたとき、身を守り、ときに相手に反撃することを肯定する考え方を正当防衛と言いますが、これはあくまで個人レベルの話であって、国家が軍隊を持つことを、この個人レベルの正当防衛の論理で説明するのは無理があります。立憲主義の考え方に立てば、軍隊や警察は公権力が有する武装組織として、憲法や法律によって厳格に定められる必要があるからです。軍隊や警察が発動されるときには、個人の人権が非常な危険にさらされたり、ときに人権が制限されたり脅かされたりするからです。

従って、憲法9条は、戦力を持つこと、すなわち軍隊を持つこと自体を禁じていると考えるのが妥当であり、抽象的な、あるいは個人レベルの自衛権は、憲法に書かれていようといまいと認められていると考えるべきですが、自衛隊という軍隊を持つことは認めていないし、憲法に書かれている通り、交戦権も認めていないのです。多くの戦争が自衛の名の下で国際紛争の解決のために行われてきた歴史に鑑みれば、どう読んでも、憲法9条は自衛隊の存在やまして自衛隊が他国軍隊と交戦することを認めていないと解釈するのが妥当です。

いま述べたように戦争はおよそ自衛戦争として行われます。例えば、自国の領土であると主張している領土が、他国によって占拠されているとき(その場合、その他国も、その領土を自国の領土と主張していることが一般的です)、その領土を取り戻すために軍隊を派遣することが自衛の名の下で行われても、他国の側は侵略されたと主張し、「自衛のために」反撃に出ることになります。こうして、自衛権を発動した国どうしが交戦することになります。これはまさに、領土の領有をめぐる国際紛争を戦争によって解決しようとする行為に他なりません。

このように自衛戦争と侵略戦争の区別なんてできないし、相手の攻撃基地を先制攻撃することこそもっともすぐれた防衛措置であるという考え方もあり、そもそも21世紀の今日、最新の技術によって開発された兵器を使用して行われる戦争は、ますます防衛と攻撃の区別が曖昧になっています。

以下、結論です。軍隊を持つなら憲法9条の改正が必要です。軍隊を持つ以上、交戦権は認められなければなりません。その上で、軍隊の出動の承認手続について(緊急の場合は事後承認)、憲法で定めなければなりません。また出動の承認手続に際しての判断の基礎とすべき出動事由について明記した法律(これが安保法制にあたる)を制定すべきです。軍隊を持つこと、交戦権を持つこと、派兵することを認めないというのなら、憲法9条は改正すべきではありませんし、自衛隊はすぐに解散すべきです(国境警備、防空その他の必要のための軍部隊をどうするかは、海上保安庁との関係も含め、別途検討すべきですが)。私の主張は、すでに各所で述べていますが、憲法と現実の乖離により、憲法が空洞化することが最も危険だというものです。
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