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2015年12月16日の民法750条(夫婦同氏制)の合憲性についての最高裁判決について

今日の日本の最高裁の「夫婦同氏制」に関する判決も、また、最高裁の消極性ないし保守性を示したということができます。

「夫婦別姓の禁止」は合憲と最高裁判断、といったニュースが流れています。私は、今日、最高裁がどのような判決を提示するのか、強い関心を持って見ていました。

裁判は正直わかりにくいことが多く、報道の判決要旨などを見るだけで必ずしも、正しく理解できるとは限りません。

しかし、判決文は、それなりの長さがあり、かなりわかりにくいものです。とはいえ、自分なりにちゃんと理解したいと思うなら、直接、判決文を読むことをお勧めします。判決文は、最高裁のホームページで即日公表されます。以下がそのアドレスです。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/546/085546_hanrei.pdf

さて、今回の裁判は、上告人が、「夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定(以下「本件規定」という。)は憲法13条、14条1項、24条1項及び2項等に違反すると主張し,本件規定を改廃する立法措置をとらないという立法不作為の違法を理由に,被上告人に対し,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求める」ものでした。

「上告人」って何?と思う人がいますよね。ここで、訴えている人を「上告人」と読んでいるのは、この裁判が第一審ではなく、訴えた人が以前の判決に不服であるとして、上級審である最高裁に訴えたものであるからです。つまり、下級審の判決に不服であるとして最高裁に訴えることを「上告」と言うことから、「上告人」と呼んでいるのです。

ところで、裁判は、損害賠償請求として起こされています。「なんだ、要するに、金が欲しいんかい」と思った方がいると思いますが、そうではありません。民事訴訟の場合、損害賠償を求めるものとして行われるのが一般的です。しかし、今回のケースでは、損害賠償請求はあくまでも形式的なものにすぎず、上告人が実際に求めていることは、民法750条の規定は違憲であるという判決を引き出し、その結果、民法750条が改正されることです。

しかし、今日の判決は、民法750条の規定は、〃法13条、14条1項、24条1項及び2項、に違反していない、というもので、上告人の訴えは退けられました。

判決は、憲法の上記の3つの条項について解釈を与え、民法750条がその各条項に違反したものではないことが、憲法の上記の3つの条項ごとに説明されています。

ここで興味深いのは、 嵋楫鏥定は,憲法13条に違反するものではない」、◆嵋楫鏥定は,憲法14条1項に違反するものではない」と結論づけながら、そのあとで、「もっとも。。。」という書き出しで、上告人の主張に一定の理解を示していることです。
すなわち、最高裁の判決は、,砲弔い討蓮◆屬發辰箸癲⊂綉のように、氏が、名とあいまって、個人を他人から識別し特定する機能を有するほか、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格を一体として示すものでもあることから、氏を改める者にとって、そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり、従前の氏を使用する中で形成されてきた他人から識別し特定される機能が阻害される不利益や、個人の信用、評価、名誉感情等にも影響が及ぶという不利益が生じたりすることがあることは否定できず、特に、近年、晩婚化が進み,婚姻前の氏を使用する中で社会的な地位や業績が築かれる期間が長くなっていることから、婚姻に伴い氏を改めることにより不利益を被る者が増加してきていることは容易にうかがえるところである」と述べています。

△砲弔い討癲◆屬發辰箸癲∋瓩料択に関し、これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることに鑑みると、この現状が、夫婦となろうとする者双方の真に自由な選択の結果によるものかについて留意が求められるところであり、仮に、社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば、その影響を排除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは、憲法14条1項の趣旨に沿うものであるといえる」と述べています。

またについては、「もっとも」ではなく、「なお」で始まる文章が添えられており、「いわゆる選択的夫婦別氏制・・・に合理性がないと断ずるものではない。上記のとおり、夫婦同氏制の採用については,嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏の在り方に対する社会の受け止め方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め、この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないというべきである」と述べているのです。

結局、今回の最高裁の判決をよく読むと、夫婦同氏制を定めた民法750条の規定は、〃法13条、14条1項、24条1項及び2項、に違反していないとしつつも、夫婦同氏制により不都合が生じることがあることはその通りであり、国会で選択的夫婦別氏制を含め、どうすべきか決めなさい、と主張していることがわかります。

こうして、冒頭の私のコメントに戻ります。日本の最高裁が、自身で判断せず、しばしば国会に判断を委ねてきたことを、私は日本の最高裁が消極的、保守的であると言ってきました。三権分立の主旨からして、裁判所が、国会に判断を委ねることなく、「司法権の独立」を発揮して、主体的に判断して欲しいと思ってきました。今回は、判断回避や門前払いでなく、一応、ちゃんとした判決を出しているのですが、やはり「もっとも」とか「なお」とか言って、自身の主張に自信なさげで、国会に最終的な判断を委ねているように見えます。もちろん、国民の選挙によって選ばれた国会こそ、最高機関であるという考え方が前提にあれば、そうした判断も、一概には批判できませんが、国民の「選挙」自体の信頼性が問われているこんにち、国会の判断に委ねてしまうことや、社会の常識のようなところに判断の根拠をおくことには疑問を感じます。むしろ、立憲主義と人権を守るために、司法は、積極的かつ進歩的(国会よりも、という意味で)であってほしい、と私は思います。

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