RUSSIAN POLITICS / UENO'S SEMINAR
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ロシア報道における「印象操作」
トランプ米国大統領の取りあえずのこれまでの功績は「フェイク(偽)ニュース」という言葉を流行らせたことだと思う。一方の安倍総理も同様にメディア関連用語とも言える「印象操作」という言葉を流行らせたが、これも秀逸だと思う。
 
話は少し変わるが、春学期に私が担当している「ロシア・ユーラシア地域研究入門1」(以下、たんに「入門1」とする)と「ロシア政治・外交B」(以下、たんに「政治外交B」とする)という授業で、6月末締め切りで、以下のようなレポート課題を出した。
 
【レポート課題】
2016年7月1日以降に公表されたロシア国内政治に関する報道を1つ(必要に応じて複数)取り上げ、それに対するコメントを書く。コメントは、報道の真偽、報道の仕方、すなわち報道の客観性・中立性または恣意性、報道(記事作成者)の意図、報道(記事作成者)のステレオタイプ(型にはまった考え方)またはバイアス、見出しと報道内容の不一致などに対するコメントとする。報道されている事件・事実関係そのものに対するコメントではない。そして、たんなる感想ではなく、問題点・疑問の指摘、批判的視点、いわゆる「突っ込み」などがあることが望ましい。
 
これは、「政治・外交B」のレポート課題で、「入門1」のほうは、1行目の「ロシア国内政治に関する報道」という部分が、授業の内容に合わせて、「ロシア・ユーラシア地域(旧ソ連地域)の歴史または現代政治、あるいは日本との関係に関する報道」としたところが異なるだけである。
 
授業の履修登録者数は、「入門1」が121名、「政治・外交B」が91名なので、概ね200本ほどのレポートが提出された。そのレポートの多くが、取り上げた報道について、「読者をミスリードするものである」といった指摘をしている。読者をミスリードするとは、読者を間違った方向に導く、つまり読者を誤解させる、という意味である。学生のレポートに添付されている報道を読むと、確かに、学生の言うとおりである。
 
ちなみに、今の学生は、紙の新聞をほとんど読まないため、学生がレポートに添付している報道はほとんど、ネット上で公開されている報道である。もちろん、報道の送り手には新聞社もあるが、内外の通信社やテレビ局のものも多い。
 
さて、学生の言う「ミスリード」の典型例として複数の学生が取り上げた報道は、6月12日にロシア全土で行われた反腐敗デモについての報道である。締め切りが6月末だったため、直近のこの報道を取り上げた学生が少なからずいたわけである。
 
念のため、この6月12日のデモについての代表的な報道を以下に示そう。
 
**************************
【朝日新聞(2017年6月13日、紙媒体は同日朝刊9頁)】
ロシアで反政府デモ 高官汚職を批判 首都など各地
 ロシア各地で12日、政府高官らの汚職を批判するデモが開かれた。モスクワでは、老朽化した住宅の建て替え計画への反対派も呼応し、少なくとも数千人が参加したとみられる。プーチン大統領の支持率は8割を超えているが、政府高官や行政当局への不信感は根強いことが浮き彫りとなった。
 極東のウラジオストクでは中心部の広場に300人以上が集まり、「プーチンは泥棒」「政権交代が必要だ」など政府の汚職体質を批判して市内を行進した。
 ただ集会は当局が許可せず、主催者が同日朝に拘束されたほか、プラカードを掲げた人など約10人も警察に捕まった。政権支持派との小競り合いで負傷し、流血する人も出た。
 参加した建設業のアレクサンドルさん(39)は「ロシアは豊富な資源があるのに政権幹部らが懐に入れるので、給料が上がらない。プーチン大統領はやめるべきだ」と話した。
 モスクワでは、デモの呼びかけ人でプーチン政権を厳しく批判し、政府高官の蓄財やぜいたくを暴露してきた野党指導者のナバリヌイ氏が自宅を出たところで警察に拘束された。市中心部は警官隊が多数配備され、ものものしい雰囲気につつまれた。周辺には数千人が集まった。ナバリヌイ氏のTシャツを着た若者や、欧州連合の旗を掲げた若者が次々に警官隊に取り押さえられた。独立系メディアによると、600人以上が身柄を拘束された。
 ナバリヌイ氏は3月26日に、ロシア各地で反政権デモを開くことに成功した。今回はその続きという位置づけだ。
 さらに首都モスクワでは12日、ソ連時代に数多く建設された5階建ての集合住宅建て替え計画への反対派もデモを行った。計画は、今年2月、プーチン大統領とソビャーニン・モスクワ市長が打ち出した。しかし、住民からは「財産権の侵害で憲法違反だ」との反発が噴出。プーチン氏は「無理やり押しつけてはいけない」と発言するなど、火消しに追われている。背景には、建て替え計画の背後に行政当局の利権や腐敗があるのではないかという根強い不信感がある。
 来年3月に次期大統領選を控え、プーチン政権は反政権運動の盛り上がりに神経をとがらせている。
 (モスクワ=駒木明義、ウラジオストク=中川仁樹)

 
【読売新聞(2017年6月13日、紙媒体は同日朝刊7頁)】 
反プーチンデモ900人超拘束
【モスクワ=畑武尊】ロシア各地で12日、プーチン政権の腐敗に抗議する大規模なデモが行われた。3月末のデモに続くもので、独立系メディアによると、モスクワではデモを呼びかけた著名なブロガーのアレクセイ・ナワリヌイ氏(41)ら600人以上が拘束された。
 モスクワ市当局によると、市中心部では約5000人の若者らが集結、プーチン体制下で広がる閉塞(へいそく)感や格差拡大への不満を背景に「プーチンなきロシアを」などと声を上げた。周辺には多数の警官が配置され、緊張した雰囲気が続いた。
 地元メディアによると、西部サンクトペテルブルクなどでも集会が開かれ、全土で900人以上が拘束された。
**************************
 
朝日が「反政府デモ」としているのに対して、読売は「反プーチンデモ」としている、といった細かなツッコミはさておき、学生の言う「ミスリード」というのは、以下のようなことだ。
 
【これらの記事を読んだ読者は、「ロシアでは反政府デモが鎮圧されている。ロシアは言論や集会の自由もない非民主的な国だ」と思うだろうが、これらのデモの参加者が拘束されたのは、これらのデモが反政府デモだからという理由ではなく、許可されていない場所で行われた無届けデモだからだ。デモ主催者が、モスクワ市当局が許可していた場所ではなく、本来、集会やデモを行うことができない市中心部の繁華街で無許可デモを強行した、ということを伝えないことで、あたかもロシア政府が非民主的であると誤解させる報道であり、この報道は読者をミスリードするものである。】
 
確かに、デモが行われ、拘束された参加者がいたのは事実だから、上記の報道は、トランプ氏の言う「フェイク・ニュース」ではない。しかし、ロシア政府は非民主的であるという「印象操作」が行われたのは、間違いのないところであろう。もちろん、学生たちは、だからといって、ロシアは民主的である、ということを主張しようとしているわけではない。学生たちは、現代ロシア政治にも、多くの問題があるということは、十分にわかっているはずだ。
 
ところで、モスクワ市当局はデモを許可しているのは、以下に示すように、別の報道で、すでに明らかになっているのだから、上記の報道は、デモが無届けデモ、または違法デモであることを伝えないことで、「印象操作」していると非難されても仕方ないところだろう。
 
学生は、ちゃんと、モスクワ市当局がデモを許可していることを伝える報道も見ている。たとえば、以下の報道がそれである。
 
**************************
【モスクワ 12日 ロイター】
モスクワ当局は、市中心部から離れた場所でのデモ開催を承認したが、ナワリヌイ氏は11日夜、デモで使用する音響・映像機器の提供を当局の圧力により企業が拒否していると発表。このことからモスクワでのデモ開催場所を市中心部に変更しており、当局がデモを違法とし、機動隊がデモ鎮圧を命じられる可能性がある。
( http://jp.reuters.com/article/russia-opposition-protests-idJPKBN1930BJ )

【BBC NEWS JAPAN 6月12日】
ナワリヌイ氏は当初、別の場所でデモ開催の許可を得ていたが、当局が参加者たちを「侮辱しようとした」として、モスクワ中心部で開くことを決めた。
( http://www.bbc.com/japanese/40245203 )
**************************
 
今回のレポート課題のために、あらためて日本のロシア報道を読んで、そのひどさに驚いた学生が多かったようだ。
 
私は、以前から、折に触れて、日本のロシア報道について批判してきた。たとえば、2005年のNGO・NPO法改正や、2011年12月の下院選の「選挙不正」に関する報道については、論文(「2005年12月のいわゆる『「NGO関連法」修正法』の制定過程について」『ロシアの政策決定−諸勢力と過程』日本国際問題研究所、2010年3月; 「下院選から大統領教書、そして改革へ?−2011年12月下院選に対する『不正のない選挙のために』運動の意味とその影響−」『ロシアにおけるエネルギー・環境・近代化』日本国際問題研究所、2012年3月)の中で批判しているが、とくに2011年下院選後の報道には、明らかに「フェイク・ニュース」、つまりなかったものをあったとするニュースも見られた。
 
まあ、多くの人が、ロシアに関連するニュースなど気にもとめないでほしいと願うばかりである(笑)。

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