RUSSIAN POLITICS / UENO'S SEMINAR
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モスクワでの反政府デモ、許可される場合と許可されない場合

8月10日のデモについて、ロイターは「監視団体OVDインフォによると、モスクワでは245人が拘束された。サンクトペテルブルクでも集会があり、80人が拘束されたという。このほか、ロストフ・ナ・ドヌやブリャンスクなどでも少数の人が拘束された。ただ、拘束者が1000人以上に上った先週と比べ、当局の態度は軟化した。今回のデモは先週とは異なり、当局が開催を許可した。デモは大きな混乱もなく行われていたが、終了後に若者を中心に数百人が政府の建物の周辺に集まり、プーチン大統領への不満の声を上げるなどし、機動隊が出動する事態となった。」と伝えている。

< https://jp.reuters.com/article/russia-politics-protests-idJPKCN1V206T >


ロイターは、この記事で、逮捕者が少なかったことを「当局の態度」が「軟化した」ことが理由だと理解できるように書いているが、逮捕者が少なかったのは、この記事にあるように、許可されたデモだったからだ。さらに言えば、モスクワの245人の拘束は、記事では明確ではないが、おそらく終了後の「数百人が政府の建物の周辺に集ま」ったところでなされたと推測される。これは無許可だったと推測されるからだ。

では、なぜ今回はデモが許可されたのか。ここがもっとも重要だ。この重要なことをロイターは報道していない。

もし、同じ場所でのデモが、先週は無許可で、今週が許可されるなら、当局による規則の恣意的運用であり、デモの主催者側としては困る。もちろん、先週は、別のパレードの実施が決まっていて、つまり先約があるので許可できなかったなどという合理的理由があったのであれば仕方がないが、先週の無許可の理由はそういうことではなかったと推測される。その推測は、デモについてのたくさんの国内報道を丹念に調べてみることで可能となる。

先週、つまり8月3日のデモが許可されなかったのは、実施予定地がブリバール Бульварное кольцоだったからだ。ブリバールはモスクワの中心部を一周する約9キロの並木の環状道路で、1周で9キロという短さからわかる通り、クレムリンから徒歩圏内のモスクワ最中心部の、それだけに環状道路としては最重要の、だからこそ渋滞することで有名な通りだ。歩道も狭く、モスクワにある幹線道路としては狭い部類に入る。ところで、ブリバールでの実施と言っても、集合地点は、クレムリンから北に向かう放射状の幹線道路の一つであるトヴェーリ通りТверская улицаとブリバールとの交差点にあるプーシキン広場Пушкинская площадьのことが多い。プーシキン広場は、ソ連時代にマクドナルド1号店が出店したところでもあり、近くにモスクワ市役所、高級ホテル、映画館、高級ブティックなどもあり、また地下ショッピング街などもある、言ってみればモスクワの銀座四丁目というか、渋谷スクランブル交差点というか、新宿東口伊勢丹前というか、そんなところだ。ここでのデモは、ちょっと考えられない。道路交通の邪魔になることや、もともと繁華街のため、観光客や買い物客も多く、警備上の問題も多いからだ。それだけに、逆に、強行すれば、宣伝効果も大きい。実は、デモ隊が警官隊にボカスカやられている動画を見ると、このプーシキン広場付近のことが多い。

さらに遡ると、7月27日のデモが許可されなかったのは、デモの集合場所がモスクワ市議会ビル前だったからだと推測される。これも警備上の理由だ。道路も広くない。

ちなみに、デモではなく、集会であれば、プーシキン広場での実施が許可されることはある。例えば、「選挙」がらみの最初の集会だった2011年12月下院選直後の「選挙を公正に」集会は、プーシキン広場で開催された。実は、私もこれに参加したのだが、地下鉄の出口から広場までの歩道は野次馬というか群衆がびっしりで、歩道や広場は警官隊に囲まれていて、人が車道にあふれ出ないよう規制していたのを記憶している。広場での集会のため、道路交通を止めてなかったからだ。ところが、予測に反して多くの人が集まりすぎ(その大半は野次馬だったが)、ここでの集会は、参加人数の規制もかけないと危険だ、と感じた。実際、広場の入口には臨時のゲートが設けられ、広場への入場には規制がかけられていた。私は、国際選挙監視員証とパスポートを提示した上で、警備の警察官に理由を説明して入場を許可してもらった。どんどん入れたら確かに危険だ。あらかじめ参加人数を正確にコントロールできる主催者がいるとしたら、それは役所側か、しっかりした政党や団体に限られ、SNSで参加を呼び掛けるような集会やデモは参加者数の予測ができないので、プーシキン広場で集会を実施することは不可能だと思う。許可されないのは当然だと私には思える。

で、今回のデモは、サハロフ通りПроспект Академика Сахароваの、サドーヴァヤ・スパスカヤ通りСадовая-Спасская улицаの外側部分で実施された。ここでのデモの実施は、土日であれば、基本的に許可される。この通りは、前述のブリバールの外側にあるモスクワの中心から北東方向に向かう放射道路であり、片側三車線(路上駐車スペースを車道として使用すれば片側四車線)あり、歩道もかなり広く、この通りが通行止めになっても、迂回のための並行道路もある。このサハロフ通り沿いには、VEB.RF(旧ロシア外国貿易銀行)、国際投資銀行、国際経済協力銀行、アルファバンク、ロスバンクなどの巨大オフィスビルが立ち並び、小売店舗などは、ほとんどない。それだけに土日は比較的閑散とした地域だ。だから、許可されるというわけだ。

ロシアにおける「無許可デモ」で逮捕者多数との報道が繰り返され、ロシアでは集会の自由や言論の自由が抑圧されているという印象操作が行われているが、「許可」された場合の実施場所から見る限り、「無許可」は交通や警備上の都合なのではないかと推測できる。逆に言えば、政府を支持するデモや、非政治的なデモであっても、参加者数をコントロールできる政府や責任ある団体が計画したものでない限り、プーシキン広場からデモをスタートさせ、クレムリンに向かうとか、ブリバールを回るなどのデモは許可されないのではないだろうか。

ちなみに、「ロシアの日」のパレードは、トヴェーリ通りをプーシキン広場前を通過し、クレムリンに向かって進んでいるが、あれは主催者がパレードをちゃんと計画して準備したもので、パレード参加者はあらかじめ決まっており、SNSで参加を呼び掛けるようなものではないからだ。

市民運動やNPOなどの発展は、市民社会の成熟にとって欠かせない。憲法に定められている、デモや集会、言論や表現の自由などの基本的人権は最大限保障されなければならない。しかし、それは社会を不安に陥れたり、混乱を招くものであっては、かえってマイナスだろう。デモや集会の実施も、安全や他者の権利を損なうことのないよう(ここでの議論に照らせば、デモ参加者やそれ以外の一般市民の安全を確保し、道路交通の妨げにならないようにすることを)配慮して行われなければならないだろう。

 

 

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