RUSSIAN POLITICS / UENO'S SEMINAR
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このブログの管理人(上野俊彦)の見解は管理人個人のものであり、管理人の所属する上智大学を代表するものではありません。
広告は管理人および管理人の所属する上智大学とは無関係です。掲載されている写真はとくに断りがない限り管理人が撮影したものです。

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日本とロシアが仲良くなることをアメリカはよく思っていない?
Facebookで、「日本とロシアが仲良くなることをアメリカはよく思っておらず、日ロ接近の兆しを見てとると必ず口出ししてくる…という通説がありますが、実際のところはどうでしょう?」という質問がありました。「日露接近」と言えば、「北方領土」問題ということで、この問題について限定して考えてみましょう。

まず、米国は、第2次世界大戦前に米英ソが宣言した「大西洋宣言」の領土不拡大の原則に反して、1945年ヤルタにおいて、ソ連の対日参戦を引き出すため、ソ連に、日本の領土であるサハリン南半部を「返還」し、千島列島を「引き渡す」ことを、英国とともに認めました。

米国は、このヤルタでの取り決めを、1951年サンフランシスコにおいて日本と連合国との平和条約として明文化して日本政府に認めさせ、同時に日米安全保障条約を締結して、日本を従属的同盟国として在日米軍基地を存続させました。

念のため付言しますが、サンフランシスコ平和条約における千島列島の範囲は、ヤルタ会談でのそれと同様、当然、地理上の一般的な千島列島の範囲(シュムシュ島から国後島まで)であり、日本政府も批准国会でそのように説明しています。「択捉島と国後島は、サンフランシスコ平和条約で放棄した千島列島には含まれない」という解釈変更は1961年の池田内閣のときにおこなわれました。

さて、次いで日本政府は、中華人民共和国が参加していない、日本の放棄したサハリン南半部と千島列島がソ連領であることが明記されていない、などの理由によりサンフランシスコ平和条約に調印しなかったソ連と、個別に平和条約締結交渉をおこなうことになりましたが、条約の領土条項は、当然、ヤルタおよびそれを確認したサンフランシスコ平和条約と矛盾しないかたちで締結せざるを得ませんから、日本政府は、地理上の一般的な千島列島には含まれていない、歯舞諸島と色丹島の返還という条件で条約を締結しようとします。ところが、ここで米国は、日ソ平和条約が締結されることで、米軍基地撤去・沖縄返還の実現のために日米安保体制に反対する日本の親ソ派野党勢力(旧日本社会党)が勢いづくのをおそれ、日ソ間にくさびを打つことを決意し、突然、ヤルタとサンフランシスコの取り決めを反故にして、歯舞諸島と色丹島の返還を条件とした日ソ平和条約締結は認めないという方針に転換し(ダレスの恫喝)、それに従って日本政府は、択捉島と国後島の返還を追加したため、平和条約の締結に失敗します。

ここまでは歴史的事実だと思います。その後ブレジネフ時代に入り、ソ連はソ日間に未解決の問題はないとして、ゴルバチョフ登場までは、「北方領土」問題については取り付くシマもなかった、というのが日本政府の公式の説明ですが、少なくとも、1971年米中接近(ニクソンショック)、1972年日中国交正常化・沖縄返還(日米関係の好転)などで、ソ連が孤立感を深めた時期に何回か契機はあったようです(1972年1月グロムイコ外相訪日、10月田中総理訪ソ)。確証はありませんが、沖縄返還を実現した佐藤はそれに満足して日ソ平和条約締結交渉という危ない橋を渡る気持ちはなかったようですが、石油外交を表向きの理由にして訪ソした田中には野心があったようで、秘密裏に平和条約締結交渉の開始に合意したかも知れません。田中失脚の原因となったロッキード事件が米国の上院外交委員会から始まったことが気になります。つまりP3C対潜哨戒機の導入に絡む収賄事件とは別に、確証はありませんが、米国に、田中を失脚させたい理由があったというわけです。

日ソ・日露関係に関与するあれこれの有力政治家がスキャンダルまみれで失脚したり与党を離党したりということがあるたびに、そこに米国や外務省内の親米派の動きやらが噂として浮上しますが、ここまで来るともはや学問的研究の対象からは大きく逸脱してしまい、私にはわかりませんが、少なくとも学問的に見てはっきりしているのは、「北方領土」問題の発端は、ヤルタと、それを確認したサンフランシスコにあり、その主要なアクター、とくにサンフランシスコ平和条約の作成者は、ほかならぬ米国国務省だということです。ということは、「北方領土」問題の解決は、米国の同意なくしては困難であることは、明らかです。

原爆投下後の敗色濃厚なときに対日参戦して「北方領土」をかすめ取っていったソ連を「火事場泥棒」と非難し、ソ連・ロシアの「不法占拠」と言うことは簡単ですが、対日参戦は米国が求めたことであり、少なくとも択捉島と国後島の占領は米国の認めるところであったわけです。もちろん、日米同盟下にある現在の日本政府が米国を批判することはできませんが、私たちは、「北方領土」をめぐる歴史的事実を正確に理解しておく必要があると思います。
| comments | 12:07 | comments(0) | - |
サハリン州知事の逮捕に関連した法制度についての覚書
最近、新聞で、サハリン州知事が逮捕されたという記事をちらっと見た気がしていましたが、サハリンに派遣されている記者さんからそれに関連した質問がメールで寄せられてきました。お返事を差し上げるために、それなりに調べたりもしたので、自分の覚えとしても必要なので、返信の質疑応答の部分だけ、転載することにしました。

|了を決める際に「選挙するしない」「大統領が任命するしない」はどのような法令に基づくのでしょうか?

ロシア連邦は連邦制を採用していますので、連邦構成主体首長の決め方については、「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」(1)および「ロシア連邦国民の選挙権および国民投票参加権の基本的保障についてのロシア連邦法」(2)で基本原則を定め、その基本原則の枠内で、各連邦構成主体が、連邦構成主体の憲法(または憲章)および法律によって独自に定めることができるようになっています。

さて、連邦構成主体首長の選出の原則については、「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」第18条第3項第1段が、「ロシア連邦の連邦構成主体の最高公職者(ロシア連邦の連邦構成主体の最高執行国家権力機関の長)は、ロシア連邦の当該連邦構成主体の領域内に居住し、連邦法に従って秘密投票による普通・平等・直接選挙権に基づく選挙権を有する、ロシア連邦国民により選挙される」と規定して、連邦構成主体首長が住民による直接選挙により選出されること、いわゆる公選制を定めています。

しかし、同法第18条第3.2項第1段は、「ロシア連邦の連邦構成主体の憲法(憲章)および法律により、ロシア連邦の連邦構成主体の最高公職者(ロシア連邦の連邦構成主体の最高執行国家権力機関の長)が、本項の規定に従って、ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の議員により選出されることを定めることができる」と規定し、連邦構成主体首長が、住民による直接選挙、いわゆる公選ではなく、当該連邦構成主体の議会によって選出することができると定めています。

この場合、国家会議(下院)および当該連邦構成主体議会に議席を有する政党が候補者リストを大統領に提出し、その中から大統領が候補者を選定して、当該連邦構成主体議会に提案されるという手続きが取られます。

これが、いわゆる大統領による連邦構成主体首長の任命制と言われるものですが、実際には、単純に大統領が任命するのではなく、当該連邦構成主体議会に議席を有する政党が候補者をノミネートし、その中から大統領が最も適当だと思われる候補者を選定し、当該連邦構成主体が選出する方式ですので、大統領が地元の意向を無視して好き勝手に連邦構成主体首長を任命できるわけではありません。

このように、「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」は、第18条第3項で、連邦構成主体首長の公選制を定めていますが、第18条3.2項で、連邦構成主体の憲法(憲章)および法律に定めがある場合には公選によらず連邦構成主体議会による選出ができると規定しています。

そこで、サハリン州の場合がどうなっているのかを知るためには、「サハリン州憲章」(3)および「サハリン州知事選挙についてのサハリン州法」(4)を見る必要があります。

「サハリン州憲章」第25条第2項は、州知事に選ばれることのできる住民の要件について規定していますが、「連邦法、サハリン州憲章、サハリン州法によって定められている手続きに従って」選ばれるとあるだけで、具体的な選出手続を定めていません。

そこで、「サハリン州知事選挙についてのサハリン州法」を見てみると、その第1条第1項で、「サハリン州知事は、秘密投票による普通・平等・直接選挙権に基づいてロシア連邦国民によって選出される」と規定しており、サハリン州知事は公選制であることがわかります。

注(1) http://base.consultant.ru/cons/cgi/online.cgi?req=doc;base=LAW;n=174904
注(2) http://base.consultant.ru/cons/cgi/online.cgi?req=doc;base=LAW;n=174896
注(3) http://www.dumasakhalin.ru/documents/region-regulations
注(4) http://doc.dumasakhalin.ru/document926.html

当初任期4年だったのが、5年になったのは最近ですか?

最近ではありません。少なくとも2009年10月26日にはサハリン州知事の任期が5年になっていることが「サハリン州憲章」を見ることで確認できます。「サハリン州憲章」第25条第3項は、「サハリン州知事の任期は5年である」と規定しています。この第25条のテキストは2009年10月26日付サハリン州法による修正に基づくテキストであることが同憲章に書かれています。

ところで、前述の「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」は、連邦構成主体首長の任期については、その第5項で、「ロシア連邦の連邦構成主体の最高公職者(ロシア連邦の連邦構成主体最高執行国家権力機関の長)は、5年を超えない任期で選出され、連続して2期を超えて上記の職に選出されることはできない。ロシア連邦の連邦構成主体の最高公職者(ロシア連邦の連邦構成主体最高執行国家権力機関の長)の任期は、ロシア連邦の連邦構成主体の憲法(憲章)によって定められ、その就任の日から数えられる」と規定していますので、5年を上限として、連邦構成主体が独自に定めることができることになっています。

それゆえ、サハリン州知事の任期が4年だったこともあるわけですが、いつまで4年だったのかは、現時点では調べられませんでした。ただし、「サハリン州憲章」の修正の履歴を遡っていくと、たまたま2005年10月14日の段階では4年の任期であることがわかりました(5)。

したがって、サハリン州知事の任期が4年から5年に変わったのは、少なくとも2005年10月14日から2009年10月26日までのあいだであるということは確かです。

もっとも、2004年12月11日付の「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」の修正によって、連邦構成主体首長の事実上の任命制が導入され、その制度は、2012年5月2日付の「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」の修正による公選制の復活まで続きますので、この間、連邦構成主体首長の任期は実際のところ意味はなかったとも言えます。

注(5) http://vff-s.narod.ru/sb/b6/270_00.html

A挙を経ても大統領の任命が必要なのでしょうか?(昨年統一地方選で沿海地方知事はこの流れでした)

前述の「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」第18条第3項,よび同法第18条第3.2項,竜定を見る限り、国民による直接選挙か、大統領の推薦する候補者を連邦構成主体議会が選出するか、どちらかであると考えられます。プリモーリエ辺区の事例については、辺区の憲章および法律等を調べてみなければわかりません。

し沙事件に問われる際、どのタイミングで知事を失職することが多いのか?

連邦構成主体首長の任期満了前の辞職については、前述の「ロシア連邦の連邦構成主体の立法(代議制)国家権力機関の組織の一般原則についての連邦法」第19条第1項第7号および「サハリン州憲章」第28条第2項第7号には、「裁判所の有罪判決の法的効力が連邦構成主体首長に対して及ぶとき」と規定されていますから、有罪判決の確定により、失職すると考えられます。

ただし、同法第19条第1項第2号および同憲章第28条第2項第2号は、連邦構成主体議会による不信任に関連して「大統領によって免職されたとき」、同法第19条第1項第4号および同憲章第28条第2項第4号には、「不適切な職務執行」、法律違反、汚職等により、「大統領の信頼が失われることにより免職されたとき」、などの規定がありますから、議会の不信任決議の採択や「大統領の信頼が失われた」と判断するのに妥当な事由があれば、有罪判決の確定を待たずに失職する可能性があると考えられます。

ズ2鵑里茲Δ妨戎γ了が汚職事件ですぐに拘束・逮捕される事例は過去にあったのでしょうか?

正確に記憶していませんが、あったと思います。

ロシアでは、大統領および国会議員は、任期の全期間にわたり不逮捕特権があります(ロシア連邦憲法第91条、第98条)が、連邦構成主体首長には不逮捕特権はありません。したがって、汚職等の容疑がある場合、証拠隠滅のおそれがあると見なされれば、すぐに逮捕・拘留されることになるでしょう。

訴訟手続は、警察(ロシアの場合は、内務省指揮下の警察だけでなく、保安庁、税務警察等も捜査権や逮捕権があるようです)による逮捕・拘留がまずあり、その後に起訴→検察による取り調べ→公判→判決という手順ですすめられます。他人に危害を及ぼすおそれがない、証拠隠滅や逃亡のおそれがない、と裁判所が判断した場合には、逮捕後の拘留期限の延長が認められず、釈放されることになります。

以上です。
| about Russia | 01:05 | comments(0) | - |
ネムツォフ元第1副首相の暗殺(3月2日のTwitterのまとめ)
ネムツォフ元第1副首相の殺害。ネムツォフが著名な政治家で、野党(とはいえ下院に議席はない)指導者だったため、日本のメディアではプーチン政権が反対派つぶしのためにやったと言わんばかりの報道もあるが、そんなお粗末な話ではないだろう。

ネムツォフら、右派リベラルといわれるグループはエリツィン政権期に政権中枢にいたわけだが、そのときロシア経済はひどい状態だった。他方、プーチンが大統領になった2000年以降、ロシアは高度経済成長に入り、豊かになった。だから、プーチン支持率は高く、右派リベラルは下院の議席が取れない。

右派リベラルは厳しい政権批判をしているが政治的影響力は小さい。次回下院選では小選挙区が復活し、右派リベラルがわずかな議席を獲得する可能性はあるが、政権は揺らぐはずもない。右派リベラルが政権批判のデモや集会をやっても、むしろ政権は「ほら、ロシアには言論の自由があるでしょ」と言える。

政権内のもののわかった連中は、右派リベラルの指導者を殺害したところでメリットは何もなく、むしろ西側の「だからロシアは」という反露キャンペーンが盛り上がることのデメリットのほうが大きいことをわかっているだろう。昨年来のウクライナ危機のため白い目で見られている昨今なら、なおのことだ。

ネムツォフ暗殺を、ロンドンで毒殺されたリトビネンコ元保安庁職員、モスクワで射殺されたフリージャーナリストのポリトコフスカヤと並べて、「ロシアの闇」という見出しが躍った。だがリトビネンコもポリトコフスカヤも殺害される前は無名の人だった。著名な政治家だったネムツォフとはまったく違う。

リトビネンコとポリトコフスカヤとネムツォフの共通点は殺害されたということだけで、背景事情はそれぞれまったく違う。だが、「ロシアの闇」を喧伝する材料としては同じということだろうか。しかし、ネムツォフは、先の両者とは違い、政治家として多少なりとも国内では影響力があった人だ。

ユーシェンコ・ウクライナ大統領の顧問になったことなど、プーチン政権になってからのネムツォフの行動に疑問(つまりロシア国内の右派リベラルの糾合のためにもっと働くべきだ)がないわけではないが、今回の暗殺は、ロシアにとって、つまり政権にとっても国民にとっても、とても残念なことだと思う。
| about Russia | 12:12 | comments(0) | - |
ウクライナのキイウで2014年2月21日から22日にかけて起きた出来事から1年
複雑な政治的事件の原因や始まりは一つではない。こんにち「ウクライナ政変」または「ウクライナ危機」と呼ばれている事件も、その原因や、そもそもいつから始まったのか、ということを一つに特定することは難しい。とはいえ、今日から1年前の2014年2月21日から22日にかけてキイウで起きた一連の出来事が「ウクライナ政変」の一つの区切りであったことは間違いない。

在ウクライナ日本国大使館の『ウクライナ週報【2月15日〜2月21日】』(2014年2月25日)は、2月21日の項に以下のように記している。
 
▼大統領・政府及び野党・反対派の協議
・21日、ヤヌコーヴィチ大統領は、EU3カ国代表(独・ポーランド外相及び仏外務省欧州大陸担当局長他)同席の下、野党3党指導者(クリチコ・ウダール党党首、ヤツェニューク・バチキフシチナ党会派長及びチャフニボク・スヴォボーダ党党首)と政治危機解決に向けた合意文書に署名。ロシア代表のルキン人権委員他3名は、合意のアクターが不明であること等を理由に同席せず。合意内容は、挙国一致内閣の樹立、本年12月までに繰り上げ大統領選挙実施、最高会議で大統領の権限を制限する2004年憲法への回帰法案採択、 与野党・欧州評議会監視の下、暴力行為の責任者の捜査、政府・反政府双方の暴力停止・違法な武器所持の停止、占拠した建物・道路の解放、及び「恩赦法」の採択。
▼野党及び反政府側の動向
・21日、午後8時頃、野党3党党首が反政府活動家・キエフ市民で満杯の独立広場に登場し、ヤヌコーヴィチ大統領との合意等に関する説明を実施。ヤツェニューク・バチキフシチナ党会派長は、合意内容は最善策でなく大統領選の時期見直し等が必要であり、独立広場での反対運動を継続する旨発言。これに対し、全国「独立広場」連盟、「ライト・セクター」及び「自警隊」等は合意内容に不満を示し、ヤヌコーヴィチ大統領の即時辞任及び繰り上げ大統領選挙実施、及び反政府活動家等を襲撃した責任のある警察実行部隊、同幹部、検察官及び裁判官等の処罰を要求し、犠牲者の棺を示す等して野党党首に対し「恥を知れ」と連呼。

その1週間後に発行された在ウクライナ日本国大使館の『ウクライナ週報【2月22日〜2月28日】』(2014年3月4日)は、2月22日の項に以下のように記している。
 
▼最高会議での動き
・22日、午前10時頃より本会議が再開。審議における結果は概要以下のとおり。
−ティモシェンコ元首相をベニス委員会決定に基づき即座に解放する旨の法案が採択(賛成322)。(同日午後17時過ぎ、同元首相釈放)
−21日に2004年憲法への回帰を認める法案が採択されていたものの、ヤヌコーヴィチ大統領が与野党合意による期限内に署名を行わなかったとして、同憲法を即座に発効させる法案が採択(賛成325)。
−ヤヌコーヴィチ大統領は憲法に定められた権限を放棄し義務を遂行し得ないとし、5月25日に繰り上げ大統領選挙を実施する旨の決議案が採択(賛成328)。

これらの『ウクライナ週報』の記事には、2014年2月21日の深夜から翌22日の未明にかけてヤヌコーヴィッチ大統領が逃亡したことは直接的には書かれていないが、引用した22日の項の最後の部分に、「ヤヌコーヴィチ大統領は憲法に定められた権限を放棄し義務を遂行し得ない」と書かれていることから、このときすでにヤヌコーヴィチ大統領がその権限を行使していなかったことがわかる。
 
この2日間の記事を読んですぐに気付くことは、21日に、EU3ヵ国代表の同席の下、ヤヌコーヴィチ大統領と野党3党指導者が、政治危機解決に向けた合意文書に署名したことである。しかし、この合意は実施されなかった。それどころか、この合意の一方の当事者であるヤヌコーヴィチ大統領は逃亡してしまった。なぜなのか。そのことは、そのすぐあとの『ウクライナ週報』の記述が教えてくれる。すなわち、「21日、午後8時頃、野党3党党首が反政府活動家・キエフ市民で満杯の独立広場に登場し、ヤヌコーヴィチ大統領との合意等に関する説明を実施。・・・これに対し、全国「独立広場」連盟、「ライト・セクター」及び「自警隊」等は合意内容に不満を示し、・・・野党党首に対し「恥を知れ」と連呼」し、このあと、『ウクライナ週報』には書かれていないが、大統領府へと、全国「独立広場」連盟以下の過激派が突入したからである。

「力による現状変更は認めない」という発言は、昨年を通じて、安倍総理や岸田外相がしばしば口にしていたことである。その念頭に置かれていたのは、ロシアであり、中国であったようだが、ウクライナ政変における力による現状変更の最初のものは、この2月21日から22日にかけて起きている。

その後に起きたロシアによるクリミアの併合、東ウクライナにおける武力紛争に関して、当事者であるロシアや武力紛争に関与しているウクライナ政府側・東ウクライナ武装勢力側について、その行動を免罪したり支持したりするつもりはないが、この2014年2月21日から2月22日にかけての「力による現状変更」という最初のボタンの掛け違いがなければ、ウクライナにおけるその後の一連の紛争は避けられた可能性が高い。その意味では、この2014年2月21日の合意の実施を妨げた人々の責任はきわめて重いと言わざるを得ない。

 
| about Ukraine | 12:48 | comments(0) | - |
2月12日ミンスクにおける停戦合意

昨日の読売新聞朝刊3面に掲載された私のコメントを載せます。

| about Ukraine | 10:55 | comments(0) | - |
秋学期の授業が終わって
1月22日(木)5時間目「グローバル化と人権」。2014年度の最後の授業。そして2015年度がサバーティカルとなるので、この授業から1年以上、授業をしないことになるのですが、その授業は、ロシア語学科OGに特別講義をお願いしました。
教え子と言っても大したことは教えていないけれど、教え子の講義を聴くのは初めての経験で、ちょっと胸が熱くなると言うか、うれしかったです。パワーポイントを使いながら、とても聞きやすく、立派な授業でした。
前半ではロシア語学科から米国の大学院までの勉強の足跡、米国の大学院入学のためにやっておくべきこと、心がけておくべきことなど、海外の大学院進学を考えている学生さんにとってはとても参考になる話でした。
後半は国連のインターンとしてカザフスタンに行って開発援助に関係する国際機関の仕事をしたこと、そしていよいよ本格的に在グルジア日本大使館で開発援助の仕事をした経験など、素晴らしい話でした。とくに、グルジアでは、地雷除去や不発弾処理、あるいは紛争和平後の境界線近くの幼稚園の再建事業、などに対する支援とそれらのプロジェクトを実施するNGOなどのモニタリングのために、あちこちグルジア国内を飛び回った話など、私も驚くような話ばかりで、すごいなぁと、感心し、感動していました。
多分、教え子でなければ感心はするけど、こういう感動はなかったと思います。あの、ロシア語学科の◯◯さんが、というのがあるからなんですね。

例えば、ロシアの地方とか東南アジアとかで日本語教師をしている卒業生とか、会社の仕事で、ロシアや中央アジアで頑張っている卒業生とか、そういう話を聞くと(Facebookで見ると)、本当にすごいなぁと思います。
それから、日本で、仙台の学校で英語の先生をしていて、東北大震災のとき、子どもたちを叱咤激励しながら(◯◯さんなら、きっと、そうだったんだろうなという想像だけど)避難したとか、そのあとテレビ局の報道記者として東北大震災のときには被災地にずっと泊まりがけで頑張ったとか、そういう話を聞いたときも涙が出そうになりました。
そうかと思うと、何気ない子育ての悩みとかの話を聞くと(読んだりすると)、そう言えば、うちの子が小さいときもそうだった、そうだった、とか、自分は父親としてどうだったのかな、と振り返ってみたり。
教員になってよかったと思うのは、そんな何気ない卒業生たちの「いま」に触れたときですね。私が教員をしていなかったら、きっと知ることのできなかったことだと思うから。

現役生はいま期末試験の最中ですが、むしろ授業期間中に実施された必修ロシア語の成績が気になっています。ロシア語学科生は留年がかかっているからです。人生に失敗はつきものだけど、1回は落としてしまっても、2回目に進級できればいいわけで、06入学からは3年・4年の必修が選択になったので、1回は落としても4年で卒業することは可能になったので、必要以上に落胆することはないと思います。実際、1回落としても4年で卒業した学生はたくさんいますから、次は頑張れ、って思います。多分、ロシア語学科に入学してくるまで、順調に来た人が多いはずだから、「進級できない」ってなったら、が〜ん、とショックを受けてしまうんだと思います。でも、長い人生の中で、このくらいの失敗は大したことはありません。いくらでも取り返すことができます。勉強時間が足らなかった? バイトやサークルで忙しくて? 夜遅くまで起きていて朝起きれなくて遅刻や休みが多くなってしまい、出席日数が不足? 体調が悪いことが多かった? なぜ落としてしまったのか、をよく考えて、対策を考えなければなりません。規則正しい生活をして早起きできるようにするとか、少し節約してバイトを減らして勉強時間を確保するとか、友だちに誘われたら断れない弱気な性格をちょっとだけ変えて「忙しいから、今日はごめん」って言える自分になるとか、先生にどんどん聞きに行っちゃうとか、「毎日3時間は必ず勉強する」という目標を立てて頑張ってみるとか。

2度連続落としたら退学という制度はまだあります。2度連続で落とすにはそれなりの事情があります。健康上の理由は、まずは健康、ということしか言えないけど、ロシア語ができなくて退学しても、他大で頑張った人をたくさん知っています。中には世間的には上智のロシア語学科より入学が難しいと考えられているところに合格して、別の分野で楽しく勉強ができたっていう人もいて、そういう人を見るにつけても、ロシア語学科に入ってロシア語ができないと自分はダメなヤツだって思って欲しくないなと思います。正直、学科長をやっていた頃、一番、嫌な仕事は、退学の宣告(実際には、自主退学の勧め)でした。私が、この勧めをした学生さんの名前と顔は、はっきり覚えています。今でも、メールのやりとりをしたり、たまに会ってごはん食べたりする人もいますが、ほとんどの人は、何年か経つうちに連絡が取れなくなります。当然ですよね、ちょこっと入って結局中退した大学の先生なんて、忘れてしまうのは。むしろ、忘れられるのは、その学生さんが、その後、うまくいっているということなのかなと思います。
教員は学生の味方です。実は、入学以来、事務的なこと以外っていうか、答案返却で名前呼ぶとか、そういうとき以外、一度もちゃんと話をしたことのない学生さんがいます。こういうこと自体は、たまにあることで、そういう学生さんで、端から見ていて、しっかりしていて、とくに心配がいらない学生さんなら、そのままでも構わないのです。学生さんにも、関心や相性が合って、ほかの先生と話したりしていれば、別に問題はありません。気になるのは、そんな話をしたことがない学生さんで、成績のこととかでおそらく悩んでいるんじゃないかなと思われ、しかもほかの先生とも同じように話とかぜんぜんしないような学生さんがいるときです。そういうとき、声かけしようかどうしようか考えてしまう自分がいます。声かけしにくいバリアみたいなのが張られている感じがして声かけしにくいのです。この声かけしにくい感じって、例えば、ちゃんと話したことがなくて遠くから見てるだけの片思いの人に話掛けてみる勇気がなかなか出ないみたいなのに似ている感じ? いや、違うか(笑)。とにかく、そうやって秋学期も終わってしまい、サバーティカルに入ってしまうので、そのことが、ずっと気にかかったままです。
| campus life | 11:59 | comments(0) | - |
プーチンの「威嚇」?
話題の8月29日のプーチンと学生との質疑応答の一コマ。以下の部分を「ウクライナ情勢を巡り、欧米諸国とロシアの対立が深刻化している問題で、ロシアのプーチン大統領は29日、『ロシアは核大国だ。関わり合いにならない方が良い』と述べ、欧米側を露骨に威嚇した」と要約してる(8月30日付『毎日新聞』)わけだが、やや強引だと思う。私なら、「ロシアは侵略に備えている。ロシアとことを構えないほうがよいと思わせるためだ。ロシアは核大国であり、自国の安全保障のためにつねに軍の強化に努めている」と要約する。

Естественно, мы всегда должны быть готовы отразить любую агрессию в отношении России. Всегда наши партнёры, в каком бы состоянии ни находились их государства и какой бы внешнеполитической концепции они ни придерживались, должны понимать, что с нами лучше не связываться, что касается возможного вооружённого конфликта. Но, слава богу, думаю, что никому и в голову не приходит сегодня развязывать какой-то крупномасштабный конфликт с Россией.
Я хочу напомнить, что Россия является одной из наиболее мощных ядерных держав. Это не слова, это реалии. Более того, мы укрепляем наши силы ядерного сдерживания, мы укрепляем наши Вооружённые Силы. Они действительно становятся более компактными и более эффективными, они действительно становятся более современными с точки зрения оснащения современными системами вооружения. Мы продолжаем наращивать этот потенциал и будем это делать, но не для того, чтобы кому-то угрожать, а для того, чтобы чувствовать себя в безопасности, чувствовать себя спокойно и иметь возможности реализовывать те планы, которые имеем мы в области развития экономики и социальной сферы.
| comments | 23:46 | comments(0) | - |
ウソも百遍言えば本当になる?
国連は、これまでもイスラエル軍の攻撃で多数の民間人犠牲者が出ていることについて「国際人道法違反の可能性が高い」と指摘してきましたが、7月30日に国連パレスチナ難民救済事業機関の学校が砲撃されて7人の子どもたちを含む16人が死亡したことで、今回、改めてイスラエル軍を厳しく非難しています。

しかし、それにもかかわらず、7月30日、米国国防総省は、イスラエル国内に米軍が備蓄している弾薬のイスラエル軍への供与を承認し、8月1日には、米国上院がイスラエル軍に対する2億2500万ドルの追加拠出を全会一致で承認しています。

ということは、ますます、イスラエル軍によるパレスチナへの攻撃は激しくなる可能性があります。

人の命は、いかなる理由があっても奪われてはならないと思います。それは、東ウクライナでも、パレスチナでも同じです。ウクライナ政変では米国はロシアを非難していますが、米国もまた非難されるに十分な行為をこれまでもあちこちで繰り返しています。

政治学や政治史を勉強してきて、政治に公正など求めてもムダということは知っていますが、とりわけ国際政治はアンフェアな世界だと思います。

「ウソも百遍言えば本当になる」という私の座右の銘、これが冗談になればいいと思って初めての単著のまえがきで宣言したのが10数年前のこと。でも、いっこうに冗談のネタにはならず、それどころか、ますます政治は「ウソも百遍言えば本当になる」状況がひどくなっていると思います。
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直近の衆議院選挙から見た日本国の現政府に対する「国民の支持」について
民主主義の概念は多様であり、多数決もその中の一部に過ぎず、例えば、多数決と矛盾する少数意見の尊重というのも民主主義の概念に含まれています。さて、多数決についても、どの段階での多数か、が問われます。

例えば、直近の2012年12月16日に実施された衆議院選挙における自民党の小選挙区での得票率は43.0%、比例代表での得票率は27.6%、公明党を併せても、それぞれ44.4%、39.4%です。

投票率は衆議院選挙史上最低の59.32%でしたから、絶対得票率(選挙人総数を分母とした得票率)は、自民党だけだと小選挙区25.50%、比例代表16.37%、公明党を併せてもそれぞれ26.10%、23.37%に過ぎません。
つまり、小選挙区で自民党または公明党の候補者に、また比例選挙で自民党または公明党に投票した日本国民を、現在の政府を支持している国民と仮定した場合、現在の政府を支持しているのは、20歳以上の日本国民の23〜26%程度であるということになります。

しかも、前回の衆議院選挙の選挙区割りは最高裁によって違憲状態であると判決が出ています。またとくに小選挙区選出議員の多い選挙制度(衆議院の場合、小選挙区選出300議席、比例代表選出180議席)では、上記の得票率と議席数とは大きく食い違うこととなり、自民党は294議席(議席占有率61.25%)、公明党を併せると325議席(議席占有率67.70%)を占め、議席数だけ見れば憲法的多数(3分の2以上)となりますが、そもそも選挙区割りが違憲状態であるため、この議席数も正統性に疑念があることは言うまでもありません。

したがって、現政府を「国民が支持している」と言うのは間違いではありませんが、正しくは「選挙においては国民のおおむね4分の1程度しか支持していないが、違憲状態の選挙で選出された国会議員の3分の2以上が支持している」となります。
いずれにせよ、選挙でこの程度の支持しか得られていない政府が事実上の憲法改正を「閣議決定」でやってしまうのですから、すごいことです。

政治学を勉強したものとして、少し突き放した言い方をすれば、今回の出来事は、民主主義の制度を利用した少数者の非民主的な決定採択の好例と言えます。
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「集団的自衛権行使容認」は日本国憲法違反です。
日本国憲法第9条は「‘本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。∩姐爐量榲を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定めています。

つまり、日本国憲法第9条は、国際紛争を解決する手段としての戦争および武力行使をしないこと、そのための陸海空軍その他の戦力を持たないことを定めているのです。

その憲法の規定がありながら、防衛省と、自衛隊という名の軍隊を持ち、しかも自国の防衛のみならず、他国への攻撃があったときでも戦争を遂行することができるとする「集団的自衛権行使」を容認するというのは、明らかに憲法違反です。

日本国憲法第99条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と定め、公権力の担い手に対して、憲法の遵守義務を定めています。

今回の内閣の「集団的自衛権行使容認」の閣議決定は、この日本国憲法第99条の国務大臣の憲法遵守義務違反です。

そもそも、現在の衆議院は、最高裁判決によって、違憲状態にあるとされています。その違憲状態にある衆議院によって選出された内閣総理大臣の率いる内閣で、あからさまな憲法違反の閣議決定がなされたことは、二重の意味で、憲法違反であり、憲法は国民の権利を守るために公権力の専横を抑制するものであるという近代憲法のよって立つ大原則である立憲主義を無視したものと言えます。

憲法に書かれていることもきちんと守れない日本の政府を誰が信用するでしょうか。私はこのような政府が日本の政府であることを非常に残念に思います。

軍隊を持つのであれば、憲法改正をしなければなりません。解釈改憲によって、たいていのことができるのなら、憲法はまったく空洞化してしまいます。私は、ここに最も強い危機感を持ちます。
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